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広谷純弘氏は、事務所のパートナーの石田有作氏とともに、自然光を可視化する建築をつくり続けてきた。近作では一転、光の可視化を避け、むしろ存在を感じさせないような光の在り方に挑戦した。

ひろたに・よしひろ:1956年生まれ。80年東京理科大学工学部建築学科卒業。80~2006年建築研究所アーキヴィジョン。06年アーキヴィジョン広谷スタジオ設立。代表作に「三重県立熊野古道センター」(06年)、「能作新社屋・新工場」(17年)がある(写真:日経アーキテクチュア)
ひろたに・よしひろ:1956年生まれ。80年東京理科大学工学部建築学科卒業。80~2006年建築研究所アーキヴィジョン。06年アーキヴィジョン広谷スタジオ設立。代表作に「三重県立熊野古道センター」(06年)、「能作新社屋・新工場」(17年)がある(写真:日経アーキテクチュア)
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大阪市茨木市の総持寺の境内に立つ。1階はカフェ、地階は法事などに利用する大広間の和室という構成。屋根は山が連なるようなつくりで、それぞれの頂点にトップライトを設けている(写真:車田 保)
大阪市茨木市の総持寺の境内に立つ。1階はカフェ、地階は法事などに利用する大広間の和室という構成。屋根は山が連なるようなつくりで、それぞれの頂点にトップライトを設けている(写真:車田 保)
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和歌山県田辺市に位置している。道路より少し高いレベルにある幼稚園の園庭に、切妻屋根のシンプルな木造の建物が立つ。妻面はフレキシブルボードにスギの押さえ縁を打った仕上げ(写真:車田 保)
和歌山県田辺市に位置している。道路より少し高いレベルにある幼稚園の園庭に、切妻屋根のシンプルな木造の建物が立つ。妻面はフレキシブルボードにスギの押さえ縁を打った仕上げ(写真:車田 保)
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自然光の納まりポイント
  •  昔から建築家は、それ自体は見えない光を、建築によって可視化してきた
  • 「総持寺POTALA」では、山並みのような屋根を内側から感じる光を追求した
  • 「田辺聖公会マリア礼拝堂」では、光を可視化しない建築空間を試みた

広谷さんは、建築の中でどのように光を取り入れてきましたか。

 建築にとって光は親しい友人という意識が、私の中にはあります。光自体は、人間の目には見えません。影ができるとか、絞られた開口から入る一条の光であるとか、あるいはステンドグラスの色彩を通して光を認識します。特に、自然光が何らかの形で建物に現れるとき、その場にいる人たちは光を感じ、建築を感じます。

広谷さん自身は、学生時代や、師事した建築研究所アーキヴィジョンの戸尾任宏さんから、光について学んだことはありましたか。

 私自身は、ルイス・カーンのほか、ルイス・バラガンやカルロ・スカルパの影響を受けていると思います。大学では「水と光」がテーマの研究室に在籍していたので、どこかで水と光が作品のテーマになっています。

 就職して師事した戸尾さんは、ロマネスク建築を研究されていました。ロマネスクの様式は何かを象徴的に見せるわけではありませんが、当時、戸尾さんが「薄暗い空間にぼんやりと光が広がっているのがとてもよかった」と話していた記憶があります。

 戸尾さんの下で初めて設計を担当した「湯沢町歴史民俗資料館」(1983年)は、建物の妻面頂部から光を取り入れるものでした。その他でもトップライトを用いたり、窓からの光を天井に反射させたりしました。