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東京・豊洲に都内最大級の基準階面積を持つ12階建てのテナントオフィスビルが完成した。奥行きが深い事務室は光や視線の抜けに配慮。フロア中央に交流の核となる自然光に満ちた吹き抜けを置く。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
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今井 宏氏 清水建設 九州支店設計部 部長(写真中央)
いまい・ひろし:1972年生まれ。94年北海道大学工学部建築工学科卒業、96年同大学工学研究科建築工学専攻修了、清水建設入社。設計本部プロジェクト設計部グループ長を経て現職

加登 剛司氏 同社 設計本部 プロジェクト設計部2部 グループ長(写真左手)
かと・つよし:1970年生まれ。94年京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業、清水建設入社。代表担当プロジェクトに「東急コミュニティー技術研修センターNOTIA」「南山大学付属小学校」がある

竹内 萌氏 同社 設計本部 デジタルデザインセンター
たけうち・もえ:1992年生まれ。2015年京都大学工学部建築学科卒業、17年同大学大学院工学研究科建築学専攻修了、清水建設入社。設計本部プロジェクト設計部を経て現職

北西側のホテル棟から見下ろした全景。地上12階建てで、延べ面積は約8万8000m<sup>2</sup>。免震構造を採用している。壁の中間のくぼみに風が当たり、柔らかい風となってバルコニーに入る。外壁はGRC(ガラス繊維補強セメント)パネルで軽量化を図った。同パネルの製作を担当したニチアスセムクリートの下、型枠づくりを担ったジャパンモールドにRhinocerosで作成した形状データを送って型枠を製作した。GRCパネルは超低汚染型を採用(写真:エスエス東京/島尾 望)
北西側のホテル棟から見下ろした全景。地上12階建てで、延べ面積は約8万8000m2。免震構造を採用している。壁の中間のくぼみに風が当たり、柔らかい風となってバルコニーに入る。外壁はGRC(ガラス繊維補強セメント)パネルで軽量化を図った。同パネルの製作を担当したニチアスセムクリートの下、型枠づくりを担ったジャパンモールドにRhinocerosで作成した形状データを送って型枠を製作した。GRCパネルは超低汚染型を採用(写真:エスエス東京/島尾 望)
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これまで、どのような形で自然光を設計に取り入れてきましたか。

今井 私自身は、オフィスビルの設計が多く、人が歩いて行く先に、景色や光を取り込む開口があるプランニングを志向してきました。

 以前、都内でフロア面積が大きいオフィスビルを設計し、ガラストップライトを持つ吹き抜けを設けました。エントランスを入ってすぐの場所に、外部にいるかのような明るい空間をつくろうと考えたからです。

 最近、思い返したのは、「吹き抜けには直射光が入らないほうがいいのではないか」ということです。直射光が入るとロールスクリーンが閉められたり、日射を和らげるために空調が必要になったりするからです。これらの考えが「メブクス豊洲」(2021年)のクレバスと呼ぶ吹き抜けにつながりました〔写真1〕。

〔写真1〕自然光を手すり壁に反射させて2階に導く
〔写真1〕自然光を手すり壁に反射させて2階に導く
氷河の割れ目のような形状をしていることから「クレバス」と名付けられたアトリウム。頂部のハイサイドライトから入った自然光が、手すり壁に反射して2階エントランスまで届く(写真:エスエス東京/島尾 望)
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加登 私は学校の設計を数多く手掛けてきました。そこでは生活の場をどのように体現するか。風や光、水を、いつも大切に考えてきました。一方、オフィスを見れば、大学などを卒業してからは、住宅にいるより、オフィスにいる時間のほうが長い。風や光、水を感じたり、自然の中で伸び伸びと過ごしたりすることが豊かさであり、本当に大切だと思います。

 例えば、メブクス豊洲ではオフィスの外周に、風車状にバルコニーと屋外階段を配しています。さらに内部空間にあっては、光のリフレクトによって外部の緑などを感じてもらうようにしました。

自然光の納まりポイント
  •  80m×105mと大きな平面では、バルコニーを風車状に配して自然環境を取り込む
  •  奥行きの深いオフィスフロアは、コアの分散配置によって視線や自然光が抜けるようにした
  •  ハイサイドライトで自然光を取り込み、吹き抜けの手すり壁による反射光を下階に導く