野村不動産のPMOが切り開いた中規模ハイグレードオフィス市場に近年、新規参入が相次いでいる。各社がブランドを打ち立て、商品性を競い合う。供給が少ない市場だが、コロナ禍で需要が高まっている。
中規模ハイグレードオフィス市場で不動産各社が独自のブランドをつくってしのぎを削っている〔写真1〕。近年新たに参入する企業も増えた。背景に何があるのか。
ザイマックス不動産総合研究所の中山善夫社長は中規模ハイグレードオフィスへのニーズを、「小型でも高級な車に乗りたい感覚に近い」と表現する。中規模ハイグレードオフィスに対する引き合いは強く、「参入しないのは悪手だ」と言う不動産関係者もいる。中規模ハイグレードオフィス市場が熱を帯びる理由をデータからひもといてみよう〔図1〕。
ザイマックス総研がまとめたデータによると、東京23区では、中小規模ビルと大規模ビルの面積比がおおよそ半々だ。しかし平均築年数は大規模ビルの24.9年に対し、中小規模ビルは33.6年と開きがある。ここ20年、大規模ビルの供給量に対して、中小規模ビルの供給量が大きく下回っている状況にある。
一方、オフィス需要を示す空室率を見てみると、11年初めは大規模ビルが5.9%、中小規模ビルが11.3%だったが、その差は徐々に縮まり、21年終わりは大規模ビルが3.5%、中小規模ビルが3.6%と、わずか0.1ポイントしか差がなくなった。
ニーズが高まっているのに、中小規模ビルの新規供給量は増えていない。この状況をチャンスと見て、新規参入が続いている。
さらにコロナ禍がニーズに拍車をかけている。これまで中規模オフィスは、グレードの低い雑居ビルなどからステップアップする位置付けがメインだった。コロナ禍でオフィス縮小の傾向があるなか、大規模オフィスからの縮小移転先としての要望も発生。さらに需要が高まっているというのが、オフィス業界関係者らの見方だ。