全1954文字
PR

新設が検討されているZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)用の基準で設計すると、耐力壁はどのくらい増えるのか──。日経アーキテクチュアは、独自にシミュレーションを実施し、モデル建物に耐力壁を配置してみた。その結果を報告する。

 国土交通省は、ZEHをはじめとする省エネ住宅に対応する新たな壁量の基準を検討している。日経アーキテクチュアは独自にシミュレーションを実施し、既存の建物モデルに耐力壁を配置する検証を試みた〔図1〕。

〔図1〕自立循環型住宅のモデルプランで検証
〔図1〕自立循環型住宅のモデルプランで検証
シミュレーションに用いた建物モデルの外観。住宅・建築SDGs推進センターが発行する「自立循環型住宅への設計ガイドライン」に記載されたモデルプランになる(資料:インテグラル)
[画像のクリックで拡大表示]

 シミュレーションは東京都市大学の大橋好光名誉教授が監修した。耐力壁を配置する設計は、構造計算ソフトを開発するインテグラル(茨城県つくば市)の木村良行チーフマネージャーに依頼した。

 大橋名誉教授は、ZEH用の基準として、性能表示制度の耐震等級1相当の壁量を1.2~1.25倍の値に設定した〔図2〕。

〔図2〕シミュレーションではZEH用の基準を耐震等級1相当の1.2~1.25倍に設定
〔図2〕シミュレーションではZEH用の基準を耐震等級1相当の1.2~1.25倍に設定
シミュレーションに用いた数値。建基法施行令46条で規定する床面積当たりの必要壁長さ(階の床面積に乗ずる数値)と、性能表示制度の耐震等級1相当、ZEHを想定した基準を示す。耐震等級1相当の値は、一般地域の木造2階建て住宅を想定して算出した。ZEH用の基準は、耐震等級1相当の値を1.2~1.25倍して設定した(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 性能表示制度の耐震等級1相当を基準にするのは、建築基準法施行令46条で定める現行基準と比べて、現在の建物の荷重に近いと考えるからだ。「20~25%増しにしたのは、重さ15kg/m2程度の太陽光発電パネルを屋根の半分に載せた分と、屋根や壁の断熱材の増加分、外壁に占める壁部分の面積比率が大きくなる分の合計だ」(大橋名誉教授)

 このZEH用の基準では、2階建ての1階の必要壁長さは、軽い屋根の場合「43.2~45.0」、重い屋根の場合「55.7~58.0」になる。現行基準と比較すると、最大で1.76倍になる。