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両引きボルトで強度不足に

 木造建築の仕様規定に関する設計ミスは、建物の第三者検査の現場でも確認されている。事例を基によくあるパターンを見てみよう。

 検査会社のカノム(名古屋市)の長井良至代表が挙げるのは、出隅柱のN値計算ミスだ。N値計算とは、柱頭・柱脚の接合方法を決める簡易な計算方法のことだ。

 長井代表が検査した事例は、全ての出隅柱のN値計算を誤り、本来必要な強度よりも低い接合金物を選定していた〔図5〕。N値計算では出隅に専用の係数を入れて割り増すが、この係数を用いていなかった。同様のミスは、会計検査院が発表した違反事例でも確認されている。

〔図5〕出隅柱でN値計算ミス
〔図5〕出隅柱でN値計算ミス
上は、N値計算で選定した柱頭・柱脚金物の仕様を記載した平面図。〇で囲った出隅柱のN値を0.9と間違い、2000年建設省告示1460号の(は)と記載していた。正しいN値は3.0なので同告示の(ち)になる。下は出隅柱のN値の計算式(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 N値計算にも接合金物の施工にもミスがないのに、接合部が強度不足になる場合もある。さくら事務所(東京都渋谷区)が、第三者検査を手掛けた現場で指摘した〔図6〕。N値計算の結果通り、1階の柱頭にホールダウン金物20kN、2階の柱脚に同15kNを選定し、2つを両引きボルトでつないでいた箇所だ。

〔図6〕両引きボルトで強度不足
〔図6〕両引きボルトで強度不足
左は、両引きボルトで発生していたミスの概要。右は、2階の柱脚部に施工されていた15kNのホールダウン金物。本来は20kNの金物が必要(写真:さくら事務所、資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 同社執行役員でホームインスペクターの田村啓氏は「1階の柱頭が2階の柱脚と同じ強度しか発揮できないので、1階の柱頭が強度不足になる。両引きボルトで金物をつなぐ場合は、高い方の強度に上下ともそろえる必要がある」と話す。