2階建て木造戸建て住宅などを対象に、建築確認の際の構造審査を省略する「4号特例」。2025年度に省エネ基準の適合義務化とセットで、この4号特例の範囲が縮小される。建築基準法などの改正案の国会審議が進むなか、日経アーキテクチュアは建築実務者を対象に独自アンケート調査を実施。賛成の声が6割だったものの回答者からは設計者の負担増加や、確認現場の混乱を危惧する声が寄せられた。構造審査の強化にどう備えるかをリポートする。

Q 4号特例の縮小に賛成?反対?(N=349)
「4号特例の縮小」について賛否を尋ねた。「賛成」36.7%、「どちらかといえば賛成」23.8%で、ほぼ6割が賛成と答えた。「反対」12.9%、「どちらかといえば反対」20.1%で、反対は3割程度だった。アンケートの結果は、四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
「4号特例の縮小」について賛否を尋ねた。「賛成」36.7%、「どちらかといえば賛成」23.8%で、ほぼ6割が賛成と答えた。「反対」12.9%、「どちらかといえば反対」20.1%で、反対は3割程度だった。アンケートの結果は、四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
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賛成・どちらかといえば賛成

  • ようやく既得権益で設計業務をしている設計者の淘汰が始まり、本来の設計業務に対応できない設計者は仕事ができなくなる(60歳以上男性、設計事務所)
  • 吹き抜けの多用など構造に配慮せずに意匠を考える弊害を少なくするために必要だ(60歳以上男性、官公庁など)
  • もっと構造に目が向くようになり望ましい(60歳以上男性、住宅メーカー・工務店)
  • 確認検査機関に在職しているが、4号建築物は設計者の代わりにプレカット会社などが設計している実態があった。設計者にもっと勉強してもらいたい(60歳以上男性、その他)
  • ちゃんと構造設計をしている設計事務所や工務店が評価される(50代男性、官公庁など)
  • 建て主の要望からバランスが悪いにもかかわらず対策をしないなど、首をかしげる事例が増えている(60歳以上男性、デベロッパー・不動産会社)
  • 消費者保護の観点で見直すべきだ(40代男性、その他)
  • 4号建築物で複数の違反が見つかっているので賛成。ただ、手続きを合理化しないと設計者の負荷が大きすぎる。手続きを合理化しつつ違反を減らす制度が必要(30代男性、設計事務所)
  • 4号特例は、特例を出してでも住宅を建てなければならない時代の考え方で、既に時代遅れとなっている(30代男性、その他)

反対・どちらかといえば反対

  • 梁伏せ図とプレカットとの整合性確保のため手戻りが生じやすく、その都度、設計変更確認申請となる。梁の継ぎ手と火打ち梁の関係なども審査対象となると現場は全く進まなくなる可能性が大きい(60歳以上男性、設計事務所)
  • より安全であることは当然良いことだが、個人住宅については建築主の要望を重視すべきだ(50代男性、設計事務所)
  • 業務報酬は増えないが、負担だけが増えそう(40代男性、設計事務所)
  • 地方の工務店や確認検査機関ではまだ対応できる人的配置がなされていない(40代男性、官公庁など)
  • 建築資材高騰の中でローコスト住宅を設計することが多いため、これ以上の設計監理費などの見込めない(50代男性、設計事務所)
  • 古い伝統的な建築物の大規模修繕などを多く手掛けるが、構造審査には適合しない建築基準法以前の建物ばかりで仕事を継続するのに困難である(50代男性、設計事務所)
  • 法令は頻繁に変更すべきではない(60歳以上男性、設計事務所)
  • 確認申請上の負担が増大する(50代男性、デベロッパー・不動産会社)
  • 建築士は専門的知識があるので、業務の効率化を考えて、ある程度任せてよい(50代男性、デベロッパー・不動産会社)
調査概要

「日経クロステック」建築・土木系の読者を対象に、2022年5月13日から20日にかけてアンケートを実施。349人が回答した。回答者の主な勤務先は、設計事務所(51.0%)、住宅メーカー・工務店(19.2%)、総合建設会社(9.2%)、官公庁など(3.4%)。主な職種は、意匠設計・監理(53.6%)、経営(10.0%)、構造設計・監理(9.2%)、施工(4.6%)。