DX(デジタルトランスフォーメーション)に脱炭素、老朽化対策、防災対策──。建設業界が抱える課題をビジネスで解決しようともくろむベンチャー企業が増えてきた。本特集では、建築分野とその周辺領域で事業を展開する国内のベンチャー企業にフォーカス。100社を選定し、その実力に迫った。

建築をアップデートするベンチャー100
建設業界に新風を巻き起こす100社を一挙公開
目次
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落合陽一CEOが挑む建設業界 変革にベンチャー100社は必要
建設業界に着目するベンチャー企業が増えてきた。人手不足などの課題解決に向け、彼らと大手ゼネコンが協業することも珍しくない。まずは筑波大学准教授の落合陽一氏が率いる注目企業を解剖しよう。
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ロボットや自律重機で作業楽々
立命館大学発のベンチャー企業である人機一体(滋賀県草津市)は、遠隔操作式の人型重機で知られる。ロボット技術を活用し、過酷な肉体労働や危険な場所での作業といった「苦役」を無くすことを目指す。
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狭所も高所もドローンが見張る
Liberaware(リベラウェア)(千葉市)は国産の点検用ドローンを開発し、点検サービスなどを展開する。同社の屋内専用小型ドローンIBIS(アイビス)は、天井裏や地下ピット、配管内、ボイラー内部など、狭くて暗く、汚い場所を自在に飛び回り撮影をこなす優れものだ。
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現場の3次元データ化を後押し
建設現場で計測した3次元点群データをクラウドにアップロードすると、ノイズや地表面、建物などを分類し、不要な点は自動でクリーニングしてくれる──。
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資金調達総額が過去最大の7800億円に
「2021年に国内のスタートアップ企業が調達した資金の総額は前年比46%増の約7800億円だった。過去最大ではないか」。こう語るのは、ベンチャー業界の分析を手掛けるINITIAL(イニシャル)(東京都港区)の森敦子シニアアナリストだ。
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AIを頼れる相棒に
2021年2月設立ながら大手建設会社との協業で耳目を集める東京大学発ベンチャーの燈(あかり)(東京都文京区)。競争力を失いつつある大企業をAI(人工知能)で支援し、日本を照らす燈(あかり)となりたい──。そんな思いを社名に込めた。
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デジタルで建築生産を変える
家の間取りや外観、内装の仕上げなどを建て主が自らアプリを操作して自由に選択し、価格を把握しながら設計できる。土地探しもサポートしてもらえるので、時間と費用がかかる注文住宅を、規格型住宅並みの手軽さで手に入れられる──。
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材料で建築・都市をエコに
石灰石由来の新素材「LIMEX(ライメックス)」で知られる素材ベンチャーのTBM(東京都千代田区)は、日本に数少ないユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)だ。
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IoTで建築を賢く安全に
トイレの個室にセンサーを設置し、スマートフォンなどで利用状況を簡単に確認できるサービスなどが有名なバカン(東京都千代田区)は2016年設立のIoT企業。洗車場からホテルの大浴場まで、混雑の可視化に強みを持つ。19年には清水建設が同社に出資した。災害時に避難所の空き状況を一覧できるサービスは、200…
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準大手以下のゼネコンも数十億円の投資枠
建設会社の投資といえば、かつては不動産投資ぐらいだったが、近年は生産性向上や新規事業創出などを目的に、ベンチャー投資が活発だ。
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我こそは建設DX請負人
建設テック系ベンチャー企業の筆頭格として知られるアンドパッド(東京都千代田区)。写真や図面を管理したり、日報や工程表を作成したりできる施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」を、住宅や商業施設などを手掛ける建設会社に提供している。
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職人や建設会社をじかにつなぐ
2017年設立の助太刀(東京都渋谷区)が運営する「助太刀」は、職人と建設会社をつなぐマッチングアプリだ。職種と居住地を選ぶだけの簡単な操作で、職人が自分に合った仕事を無料で探せる。サービス開始から4年でユーザー数は17万事業者を突破した。22年3月には元プロレスラーの長州力さんをイメージキャラクタ…
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メタバース争奪戦が始まった
「会社を設立した当初は、建設業界の企業と仕事をするなんて考えもしなかった」。こう当時を振り返るのはHoloLens(ホロレンズ)をはじめとするMR(複合現実)デバイスやスマートフォン、センサーなどを用いたシステム開発などを手掛けるホロラボ(東京都品川区)の中村薫代表取締役CEO(最高経営責任者)だ…
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シリコンバレー流「ベンチャー協業」5カ条
ベンチャー・スタートアップ企業への出資や協業に当たり、建設会社などの担当者は何に気を付ければいいか。大林組が米シリコンバレーに設けた拠点、Obayashi SVVLでベンチャーの探索や東京の本社とのつなぎ役などを担う佐藤寛人氏に、協業の心得を5つ挙げてもらった。
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水問題や気候変動と対峙
排水の約98%をその場で浄化できるので、水道が引かれていなくても清潔な水で手洗いができる──。そんな水循環型ポータブル手洗い機「WOSH(ウォッシュ)」をご存じだろうか。コロナ禍における新たな公衆インフラとして注目を集めた製品だ。
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メンテナンスの革新に挑む
建物内に消防設備を設置していたのに、火災時に正常に作動せず、被害が拡大してしまった──。このような事態を防ぐために、消防法では延べ面積1000m2以上の特定防火対象物などの所有者や管理者に対して、火災報知機や消火器、スプリンクラーといった消防用設備の点検と報告を義務付けている。
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激甚化する災害に備える
堤防の建設や建物の耐震性向上など、建築・土木業界が中心となって進めてきた防災対策。一定の成果は上げつつも、自然災害の激甚化に伴い想定外の被害が頻発し、ハードだけでは対応しきれなくなっている。