現役東大生が設立したAIベンチャー
25 燈(あかり)
設立:2021年 資本金:100万円 従業員数:30人
2021年2月設立ながら大手建設会社との協業で耳目を集める東京大学発ベンチャーの燈(あかり)(東京都文京区)。競争力を失いつつある大企業をAI(人工知能)で支援し、日本を照らす燈(あかり)となりたい──。そんな思いを社名に込めた。
同社を率いるのは東大工学部精密工学科3年生の野呂侑希CEO(最高経営責任者)。入学後、すぐに休学してAIベンチャーで働き始め、人材会社を創業。復学後はAI研究者でソフトバンクグループ社外取締役も務める松尾豊教授の松尾研究所で産学連携に取り組み、コロナ禍の真っただ中に燈を設立した〔写真1〕。
会社の柱はSaaS(Software as a Service)事業と、DXソリューション事業の2つ。前者については、ゼネコン向けの請求書受領システムを展開する。DXソリューション事業については、22年5月に発表した大成建設との協業成果がある。
PDF形式で文字列として保存されていて活用しづらかった設計図書のデータを、コンピューターが集計・解析できる構造化データに半自動で変換し、BI(ビジネスインテリジェンス)ダッシュボードで簡単に比較分析ができるようにした。建具表などの表構造を読み取るアルゴリズムが強み。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データなども変換できる。
建設会社の潜在資産に着目
野呂CEOが建設業に目を付けた理由はいくつかある。まず、歴史の長い企業が多いこと。社内に蓄積されてきた情報は、大量のデータの分類や解析を生業とするAI企業からすれば魅力的な資産だ。
そして、技能者の高齢化などを背景に生産性向上が求められていること。さらには、建物やインフラの老朽化が急速に進み、手間のかかる維持・補修が大量に発生すること。「デジタルとアルゴリズムで、効率化を支援したいと考えた」(野呂CEO)
野呂CEOは「“あかり”が小さいままだと、照らせる範囲も狭い。我々の目指すところは、日本のてっぺんだ。世界にも出ていきたい」と静かに闘志を燃やす。