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石灰石由来のエコな新素材を建材に
37 TBM
設立:2011年 資本金:234億2993万円 従業員数:247人

 石灰石由来の新素材「LIMEX(ライメックス)」で知られる素材ベンチャーのTBM(東京都千代田区)は、日本に数少ないユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)だ〔写真1〕。

〔写真1〕日本のベンチャー企業の代表格
〔写真1〕日本のベンチャー企業の代表格
ユニコーン企業として知られるTBM。写真は同社の山﨑敦義代表取締役CEO(写真:TBM)
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 LIMEXは石灰石の主成分である炭酸カルシウムなどの無機物を50%以上含んだ複合素材。石灰石とポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を加熱し、練り混ぜて製造する。石灰石は日本で100%自給自足が可能で、価格の変動が少ない利点がある。

 従来のプラスチック製品と比較して、石油由来の樹脂の使用量を減らせる。製造時や焼却時の二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減できるのが売り。リサイクルも可能なエコ素材として、レジ袋や食品容器、名刺など様々な用途に使用されてきた。これまで8000以上の企業や自治体に採用された実績がある。

OAフロアや天井材を共同開発

 建材への適用も始まった。アイリスオーヤマと開発したOAフロア用の資材は2020年12月から販売を開始。22年4月には大林組と共同で「不燃化LIMEX製天井材」を開発し、不燃材料の国土交通大臣認定を取得したと発表している〔写真2〕。

〔写真2〕LIMEXは建材にも使える
〔写真2〕LIMEXは建材にも使える
左はOAフロア用の「セットフロア LIMEX」、右上は「不燃化LIMEX製天井材」。右下は原料の石灰石(写真:右上は大林組、ほかの2点はTBM)
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 不燃化LIMEX製天井材は、LIMEX製の3層中空ハニカム構造の基材に、大林組が開発した金属箔複合シートを貼って不燃化している。

 TBMのLIMEX事業本部でエキスパートニュービジネスデザイナーを務める岡澤友広氏は「LIMEX自体の不燃化を目指して挑戦を続けている。ほかにも建材に適した素材の開発を進めている最中だ」と説明する。

 TBMはLIMEXのほか、使用済みのLIMEXやプラスチックを50%以上使用した「CirculeX(サーキュレックス)」と呼ぶ素材の製造などを通じて、資源循環ビジネスにも力を入れている。

 22年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関わる法律」が施行されるなど、資源循環に対する関心は高まる一方だ。

 同社は資源循環ビジネスをさらに強化する一手として、神奈川県横須賀市に自社のリサイクルプラントを新設する計画だ。使用済みのLIMEXや廃プラスチックを回収し、自動で選別。素材ごとに再生材料にする。年間処理能力は約4万トンの計画で、22年秋から稼働させる予定だ。