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排水の循環利用で住宅を変える
84 WOTA(ウォータ)
設立:2014年 資本金:1億円 従業員数:80人

 排水の約98%をその場で浄化できるので、水道が引かれていなくても清潔な水で手洗いができる──。そんな水循環型ポータブル手洗い機「WOSH(ウォッシュ)」をご存じだろうか〔写真1〕。コロナ禍における新たな公衆インフラとして注目を集めた製品だ。

〔写真1〕排水の約98%をその場で浄化
〔写真1〕排水の約98%をその場で浄化
浄化した水は、世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインの基準を満たす(写真:WOTA)
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 WOSHを開発したのは、水問題の解決に向けた技術開発を行うWOTA(ウォータ)(東京都中央区)。同社は、膜ろ過と塩素添加、紫外線照射といった独自の水循環技術を生かし、WOSHのほか、持ち運びできる水再生プラント「WOTA BOX(ウォータボックス)」を開発するなど、水の循環利用事業に取り組んできた〔写真2〕。

〔写真2〕避難所の衛生環境を向上
〔写真2〕避難所の衛生環境を向上
右はWOTAの前田瑶介代表取締役CEO。WOTA BOXは、2016年の熊本地震や18年の北海道胆振東部地震の影響で断水した地域の避難所に、シャワー用の水を確保するために導入された(写真:左はWOTA、右は日経アーキテクチュア)
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 WOTAが次のステップとして見据えるのが、建設業界への参入だ。2022年5月には「住宅規模の全排水再生循環利用に対応した小規模分散型水循環システム」を開発したと発表した。

災害時の断水リスクをなくす

 WOTAが開発した住宅用の水循環システムは、建物単位で排水の再生・循環利用を可能にするものだ。エコキュート程度の大きさの装置を手洗いと浴室、トイレなどと接続すれば、生活排水を全て再生できる。長野県軽井沢町の個人住宅での実証実験で性能を確認済みだ。

 WOTAの前田瑶介代表取締役CEO(最高経営責任者)は、「各家庭で排水から生活に必要な水をつくれるので、災害時に地域全体が断水するといったリスクを減らせる」と説明する。

 建築設計者にとってもメリットがある。このシステムを導入すれば、配管の位置にとらわれずにプランニングができるため、設計の自由度を高められるのだ。前田CEOは「配管を隠すための下地が不要になるため、コストも環境負荷も減らせる。オフィスなどの大規模な建築物にも導入できるように技術開発を進めて、早急に実用化したい」と意気込む。