建設会社や住宅会社、デベロッパーなど多彩なプレーヤーが高層木造建築に挑戦している。木材利用促進法などの法整備を後押しとして、木造を巡る技術開発は急速に進んだ。その1つの到達点として、ついに10階建てを超える純木造建築「Port Plus(ポートプラス)」が完成した。それに続く高層木造建築の建設計画も相次ぐ。木造ビルの林立する都市が現実になりつつある。先行事例を追いかけるとともに、さらなる普及に向けた課題を専門家に聞いた。

高層木造への挑戦
先行事例から見えてきたリアルな課題
目次
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街中に出現した11階建て 「純木造高層建築」の衝撃
Port Plus(ポートプラス) 大林組横浜研修所(横浜市)
最高高さ約44.1m、11階建ての「純木造高層ビル」が、横浜市で完成した。国内ではこれまで7階建てが純木造の最高だった。免震技術を併用し、高耐久性仕様の外装を施すなど、木造が抱える弱点の克服に挑んだ。
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低層木造のノウハウが使える メガストラクチャーに熱視線
KITOKI(キトキ) (東京都中央区)
国内初となるメガストラクチャーのハイブリッド木造ビル「KITOKI(キトキ)」。6月に開かれた見学セミナーには、建築設計者など約500人が詰めかけた。新たな高層木造建築の形に、多くの建築関係者が熱視線を注いでいる。
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より高く積める可能性 「木鋼組子」で街にアピール
COERU SHIBUYA(コエルシブヤ) (東京都渋谷区)
ラチス状の木と鉄骨のハイブリッド耐震システム、「木鋼組子(もっこうくみこ)」を初採用した13階建てのオフィスビルが9月にオープンする。東京都心の交差点に立ち、ガラス越しに木質ビルであることを街にアピールしている。
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岐路に立つ開発競争 「勝負どころを見定めよ」
各企業が彩る市場の見取り図
大手企業を中心に木造の技術開発競争が進み、実例も続々と誕生。中高層建築を建てるうえで、木造は特殊解ではなくなりつつある。専門家は「勝負どころを見定める時機に来ている」と指摘する。
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デベロッパーが建材供給に参戦 巨大木材工場の実力
課題(1)材料調達
高層木造建築の普及に当たり、材料の調達は避けられない課題だ。三菱地所グループの総合木材会社MEC Industry(メックインダストリー)は、鹿児島湧水工場の本格稼働を開始した。発注者としての経験を生かした建材の開発・供給に挑む。
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世界最大規模の振動台実験 米国の挑戦に日本企業も参画
課題(2)耐震構造
米国で高さ約34mの木造建築を実際に揺らす振動台実験の計画が進む。日本では“未開地”となる耐震構造の高層純木造建築。ブレイクスルーをもたらす可能性を秘めた実験に、日本の住宅会社も乗り出す。
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ついに着工した木造共同住宅 「準耐火4階建て」が可能に
課題(3)防耐火
中層木造の新たな選択肢として、「準耐火構造」が急浮上している。国土交通省が進める防耐火基準の合理化で適用範囲が拡大したためだ。完成すれば日本初となる、準耐火木造4階建て賃貸住宅が3月に着工した。
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「木造ビル」カギはBCPにあり 高層化に向け原点に立ち返れ
高層木造技術の展望
木材利用促進法(旧公共建築物等木材利用促進法)が2010年に施行され、木造を巡る技術開発や基準整備は一気に進んだ。木構造の専門家である大橋好光・東京都市大学名誉教授が見定める次世代の技術目標は。