木材利用促進法(旧公共建築物等木材利用促進法)が2010年に施行され、木造を巡る技術開発や基準整備は一気に進んだ。木構造の専門家である大橋好光・東京都市大学名誉教授が見定める次世代の技術目標は。
今でこそ企業がこぞって木造建築を研究・開発しているが、その契機となったのは木材利用促進法(以下、木促法)の施行だ。「2000年ごろまで木造といえば住宅。『中大規模木造』というワードが登場したのが13年ごろだ。ただし大急ぎでここまで来た分、積み残した課題もある」と、大橋名誉教授は語る。
「木造ビル」の普及は社会の脱炭素化に向けたカギを握る。だが施設建築は、資金回収期間が住宅より長く設定される場合もある。巨大地震に遭っても被害を受けない、あるいは軽微な修繕で性能回復できるなど、BCP(事業継続計画)が成り立つ損傷制御が欠かせない。
「長期的な資産価値を維持するに当たり、要求性能(クライテリア)をどこに置くかという点に、まだ公的基準や社会的な合意はない。木造設計においては最低基準である建築基準法を超え、事実上の標準を考える必要がある」(大橋名誉教授)
