全1491文字
PR

 「当初は一般的なスタジアムとする方向で計画に着手し、積算したところ80億円以上になると分かった。しかし、地元企業からの出資20億円、我々の借入20億円が資金調達の限度。建設費40億円までに抑えるため、抜本的見直しを図った」

 愛媛県今治市の丘陵地で建設中の「里山スタジアム」〔図12〕。事業主体となる今治.夢ビレッジ(愛媛県今治市)取締役新スタジアムプロジェクトリーダーの吉田進一氏はこう語る。

〔図1〕公園的な性格を持つ場所に
〔図1〕公園的な性格を持つ場所に
身の丈に合った建物投資で運用を開始し、サッカークラブの成長や地域のニーズなどに従って拡張できる可変型スタジアムとする。当初はメインスタンドのみ鉄骨造。公園的な性格を持つ場所となるため、外構には高野ランドスケープデザインプランニング(札幌市)が協力している(資料:梓設計)
[画像のクリックで拡大表示]
〔図2〕スタンド増設用の平場を有効活用
〔図2〕スタンド増設用の平場を有効活用
サイドとバックは、ピッチを掘った際の土を盛って土間コンクリートを打つ土盛りスタンドとする。上段の平場にはコンテナ店舗などを展開する案があるが、コロナ禍などの影響でコンテナ価格高騰が起こり、最善策を検討中(資料:梓設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 今治.夢ビレッジは、サッカークラブのFC今治を運営する今治.夢スポーツ(同市)の子会社。同クラブは今回敷地の隣に2017年、ホームとなる5000人収容の「ありがとうサービス.夢スタジアム」を確保している。

 「J2以上を目指す際に、Jリーグの施設基準が求める増設の余地が敷地にない。いずれ新スタジアムが必要になると想定し、18年末には作業を本格化させた」と吉田氏は語る。

 公募とは違い、地域で既に実績のある事業者から提案を受けた形になる。今治市では18年から営業戦略課、22年からスポーツ振興課などが担当し、協議を進めている。

 準工業地域のため、用途の制約は少ない。事業面の自由度を確保するため、民設民営を指向した。その場合に地代(賃料)や固定資産税、減価償却費の負担が生じる。今治.夢スポーツ側は市に対し、市有地の無償貸与を要望した。

 スタジアムの設計は梓設計(東京都大田区)に委ねると決め、計画に着手。冒頭のように、当初の80億円から半減させる再提案を要請した。