全1177文字
PR

14棟から成る団地型マンション「エステート貝取-2」は、3回目の大規模修繕の際に、性能向上改修を選択。当初計画にはなかったサッシ交換と外断熱改修を追加した。それを可能にしたのは、2つの補助金の受給だ。

 築39年のエステート貝取-2(東京都多摩市)の大規模修繕等準備委員会は、3回目の大規模修繕に際して改修と建て替えを比較検討し、改修で長く住み続けることに決めた。建て替えを見送ったのは、1住戸当たり78m2の負担額が約4400万円に上ることが分かったからだ〔写真1〕。

〔写真1〕2つの工区に分けて工事内容を入れ替える
〔写真1〕2つの工区に分けて工事内容を入れ替える
大規模修繕を実施しているエステート貝取-2の外観。1年目に外断熱改修と給排水管交換を実施するA工区と、サッシ・玄関ドア交換を実施するB工区に分ける。写真の住棟はA工区。2年目は工事内容を入れ替える(写真:金子勲一級建築士事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 当初計画していた大規模修繕項目は、外壁塗装と屋上防水、給排水管の更新だったが、サッシと玄関扉の交換と外断熱改修を追加した。

 理由の1つは、多摩市の優良建築物等整備事業と国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金を、いずれも受給できる見込みがついたことだ〔図1〕。

〔図1〕2つの補助金で総工事費の28%を賄う
〔図1〕2つの補助金で総工事費の28%を賄う
エステート貝取-2で実施している大規模修繕の工事費、補助金の受給予定額、修繕積立金からの支出金額、管理組合の借入金額、月額修繕積立金をまとめた。2種類の補助金を受給し、総工事費の28%を賄っている(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 補助金は重複して申請できないのが一般的だ。市と相談したところ、補助金の使い道を多摩市の分と国の分に分けて、年度をずらして申請すれば、2つの補助金を受給できることが分かった。そこで、2021年度はB工区の棟でサッシと玄関扉の交換、A工区の棟でそれ以外の工事を行い、22年度は工事内容を入れ替える工程を組んだ。サッシ工事は外断熱を傷付けないように、室内側からの入れ替えとした〔写真2〕。

〔写真2〕サッシ交換は室内側から
〔写真2〕サッシ交換は室内側から
住戸の室内側からサッシを交換している様子。既存のガラス障子を取り外し、既存サッシの下枠のレールを切って、新品のLow-Eの複層ガラス入りアルミサッシを取り付ける。15人前後の職人が流れ作業で行い、1日で4住戸のサッシ交換を終えている(写真:金子勲一級建築士事務所)
[画像のクリックで拡大表示]