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修繕積立金を値上げせずに仕上げや設備の耐久性を高め、付加価値を与える改修を行う。こうした性能向上改修は一般的に成立しにくい。朝日パリオ浦和辻では、修繕周期を延ばして工事の回数を減らすことで実現する。

 築28年の朝日パリオ浦和辻(さいたま市)は2022年6月に、2回目の大規模修繕に着手した〔写真1〕。この修繕内容は、八生設計事務所(東京都墨田区)と朝日パリオ浦和辻の管理組合が一緒に作成した。修繕積立金を値上げせずに、建材や設備の耐久性を高め、バリアフリーや災害対策などの付加価値を与える工事を加えた点が特徴だ。

〔写真1〕築28年で2回目の大規模修繕工事を実施
〔写真1〕築28年で2回目の大規模修繕工事を実施
築28年で2回目の大規模修繕工事を開始した朝日パリオ浦和辻を、ドローンで上空から撮影した。ドローンは、国交省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」の補助金対象となった外壁タイルの調査に用いた(写真:朝日パリオ浦和辻管理組合)
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 修繕内容は、国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」に21年10月採択された。管理組合は、約5800万円の補助金を受給する予定だ〔図1〕。

〔図1〕補助金と修繕積立金で乗り切る
〔図1〕補助金と修繕積立金で乗り切る
朝日パリオ浦和辻で実施している大規模修繕の工事費、補助金の受給予定額、修繕積立金からの支出金額、管理組合の借入金額、月額修繕積立金をまとめた。借り入れはせず、補助金と修繕積立金で約2億4000万円の大規模修繕事業を乗り切る(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 修繕積立金の不足に備えて途中で値上げする管理組合は多い。朝日パリオ浦和辻でも2回目の大規模修繕を前に当初計画を検証し、4回目の大規模修繕で修繕積立金が不足することを確認した。そこで、当初12年だった修繕周期を15年に延ばして将来行う大規模修繕の回数を減らす計画に改めてつくり直した。これにより、修繕積立金を据え置いて対応できる見通しが立った。

 管理組合は資金計画をさらに改善するため、周期を18年に延ばす方針を決定。18年周期の修繕計画を基に、躯体の寿命として想定する築100年までの超長期修繕計画の素案をつくった〔図2〕。

〔図2〕築100年までの超長期修繕計画を立てる
〔図2〕築100年までの超長期修繕計画を立てる
築100年までの超長期修繕計画の素案。12年周期だと築100年までに今後6回の大規模修繕が必要だが、18年周期だと4回で済む。2回目の大規模修繕工事後に築82年までの修繕計画を見直す予定だ(資料:朝日パリオ浦和辻管理組合)
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