築55年の目白武蔵野マンション(東京都豊島区)では、共用部分と専有部分を同時に改修して建物を一新する「スーパーリフォーム」に取り組もうとしている。分譲マンションでは困難だと考えられてきた再生方法だ。
1967年竣工の目白武蔵野マンションの管理組合は、築30年ごろから修繕費用の支出を抑え、建て替えを検討してきた。しかし、完成後に施行された日影規制などの影響で、建て替えても住戸数をわずかしか増やせず、区分所有者の費用負担が多額になるため、推進することができなくなった。隣地との共同建て替えも模索したが、実現には至らなかった。
現在の建物は耐震性が不足しており、大地震が来ると倒壊・大破する恐れがある。劣化も著しく、給排水管から漏水が多発していた。バルコニーがない住戸があるので、避難上の問題も抱えていた〔写真1〕。
このままでは住み続けるのが困難になると危機感を持った管理組合の担当理事は、翔設計(東京都渋谷区)に改修方法を相談した。同社は、給排水の横引き管がスラブ下にあり、下階の住戸の天井材を壊さないと交換工事ができないことに着目。給排水管やサッシの交換、耐震補強をはじめとする共用部分と、専有部分である住戸内を一緒に改修して、新築同様の性能を確保することを提案した。同社が「スーパーリフォーム」と呼ぶ手法だ〔図1〕。
耐震補強では、格子状の耐震フレームを壁の外側に取り付けてバルコニーとすることで、避難上の問題を解決する〔図2〕。給排水管は樹脂製に交換して、横引き管の位置をスラブ上に変更する〔図3〕。
共用部分と専有部分の全てを一緒に改修する方法は、一般的には全員合意を要するとして、これまでは実現困難と考えられてきた。
目白武蔵野マンションでは、共用部分と、共用部分に絡む専有部分の改修を管理組合で決議し、共用部分に絡まない専用部分の改修は各住戸の所有者の事情に応じて個別対応する。