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改正マンション建て替え円滑化法が2022年4月に全面施行した。改正のポイントは要除却認定の対象拡充と団地における敷地分割制度。多数決で敷地売却や分割が可能になる。マンションの出口戦略の選択肢が広がる。

 国土交通省は改正マンション建て替え円滑化法で2つの制度を導入した。要除却認定の対象拡充と、団地における敷地分割制度だ。どちらも、マンションの管理組合が敷地の売却や分割をする際に必要な合意形成を多数決で可能にする。全員同意のハードルを下げて、対策実施を促す狙いだ。

 国交省は、要除却認定の対象拡充を21年12月に先行施行した。要除却認定とは、危険な状態にあるマンションに対して、特定行政庁が除却の必要性を認定する制度だ。以前からある耐震性の不足に加え、4項目を追加した〔図1〕。火災安全性の不足と外壁剥落の危険性、給排水管などの劣化、バリアフリー基準への不適合だ。耐震性の不足と火災安全性の不足、外壁剥落の危険性については、生命や身体に危険性があるとして特定要除却認定と位置付ける。

〔図1〕火災安全性不足や外壁剥落でも要除却認定が可能に
〔図1〕火災安全性不足や外壁剥落でも要除却認定が可能に
要除却認定の種類と適用される制度。新たに4項目を追加した。耐震性の不足と火災安全性の不足、外壁剥落の危険性の3項目は、生命や人体への危険があるとして特定要除却認定に位置づけた。5項目とも容積率緩和の特例を適用できる。特定要除却認定の3項目は、マンション敷地売却事業や団地における敷地分割事業に活用できる(資料:国土交通省)
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 項目により適用できる制度が異なる。5項目とも適用できるのは、マンション建て替えの際に活用する容積率緩和の特例だ。特定要除却認定の3項目は、マンション敷地売却事業や団地における敷地分割事業の対象となる。どちらの事業も、要除却認定を受けた建物があれば、区分所有者などの5分の4以上の同意で事業が実施できる。