中国・四国地方初のPark-PFIとして、広島県福山市の中央公園に50席のガーデンレストラン「Enlee(エンリー)」が開業したのは2021年5月〔写真1〕。市が着手したウォーカブルなまちづくりの布石となる事業だ。
「公園施設の運営実績を持ち、身近なエリアで実現する前例にしたいという思いがあった」。Enleeの設計を手掛けたStudio Tokyo West(スタジオトウキョウウエスト)(東京都武蔵野市)代表取締役の瀬川翠氏は、こう語る。事業者として開業後も関わりを持ち続ける立場を取る。
瀬川氏は、大学生時代からシェアハウス事業を手掛ける他、18年には、まちなかウエディング事業を開始。東京都立井の頭恩賜公園を会場に使う機会を持った。「ハレとケの場を設けやすく、広さもある。積極的に使おうと他の公園にも打診したが、当時はハードルが高かった」(同氏)
福山駅前のリノベーションまちづくりに協力した際、市役所がPark-PFIの準備を始めるタイミングが重なった。応募を視野に入れ、19年5月、市内でランドスケープデザイン事務所を営む亀山本果氏(KLDO代表)ら3人とエリアマネジメント会社のleuk(ルーク)を設立した〔写真2〕。
遡ると、福山市のウォーカブルなまちづくりは、16年に市長に当選した枝広直幹氏が「駅前再生を市政の一丁目一番地とする」とうたったところから始まる。同年、駅前の伏見町で再開発準備組合が解散。市は方針を転換し、リノベーションまちづくりを展開すると決め、駅前再生ビジョン策定のために都市再生プロデューサーの清水義次氏(アフタヌーンソサエティ代表取締役)を招いた。
清水氏は、駅前に偏りぎみの公共投資を、北側の福山城公園と南側の中央公園の間に振り分けるエリア戦略を提案。公民連携を推進する一手として、中央公園の活用を進言した。