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公園は、まちなかで重要な役割を果たす。河川や道路も人が滞留する公園的な性格を担い、全体でまちの資源として認識される時代が来た。Park-PFI制度創設などの動きに関わった町田誠氏に近年の動向を聞いた。
町田 誠氏
1982年に建設省(現・国土交通省)入省。2003年に、05年日本国際博覧会(愛知万博)の会場整備の責任者を務める。11年に東京都公園緑地部長、15年に国土交通省公園緑地・景観課長に就任。在任中に都市緑地法・都市公園法等改正に携わる。21年より現職(写真:日経アーキテクチュア)
2017年の都市公園法等改正により、Park-PFI制度が創設されました。以降の動きをどう見ていますか?
町田 Park-PFI制度は、元からあった公園施設の設置管理許可制度をベースに、民間事業者からの提案を推し進めるために創設した公募制度です。21年末の段階で102事例を数えるまでに至り、今後も確実に増えていくと考えられます〔写真1~4 、図1 〕。
〔写真1〕公園内に24棟の商業施設
名古屋市に20年9月に開園した「Hisaya-odori Park」。名古屋市による事業で、公園面積約5400m2 はPark-PFI国内最大規模(指定管理者制度を併用)。24棟の商業施設が立ち並ぶ。整備・運営者は三井不動産、設計者は大成建設(建築、公園)、日建設計(公園)(写真:車田 保)
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〔写真2〕国営公園内のPark-PFI第1号
福岡市の海の中道海浜公園に22年3月に開業した宿泊施設「INN THE PARK 福岡」。国土交通省九州地方整備局による事業で、国営公園におけるPark-PFIの開業第1号。整備・運営者は三菱地所を代表とする海の中道パーク・ツーリズム共同事業体、設計はオープン・エー(基本設計)など(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真3〕フィットネスクラブを複合
東京・西新宿の新宿中央公園に20年7月に開業した「SHUKNOVA」。新宿区によるPark-PFI事業で、カフェ、レストランの他、ヨガスタジオなども備えるアウトドアフィットネスクラブを複合。整備・運営者は新都市ライフホールディングス、デザイン監修はスタジオモンス、設計は樋口英輔設計事務所(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真4〕市立図書館との連携を模索
広島県福山市の中央公園に21年5月に開業したガーデンレストラン「Enlee」。同公園内には、08年に市立図書館(写真奥)が開館している。同館との連携も模索し、Park-PFIの公募に先立つ実証実験の段階では、実験用の施設に図書を持ち出して読み聞かせなどを行っている(写真:生田 将人)
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〔図1〕民間に公募をかけて都市公園の利活用を図る
17年創設のPark-PFI制度。都市公園に建築物などを設置することはそれまでも可能だったが、期間や面積の制限を緩和し、活用を推進する姿勢を国が示した。規制によって行政が「管理」するイメージが強かった公園の性格を変える役割を果たした(資料:国土交通省の公表資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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11年に、河川では河川敷地占用許可準則の改正、道路では改正都市再生特別措置法など3つの特例により、公共空間の商業的な占用を認めるようになりました。これら道路や河川における占用許可は、本来の目的物ではない存在を“占用”という形で認める趣旨の運用になっています。ところが公園の場合、1956年に都市公園法が制定された時点から、民間事業者による公園の本来目的物の設置が想定されている。そこが、他の公共空間との圧倒的な違いです。
もともと物品販売やイベントなどを許可できる枠組みになっているわけですね。
町田 都市公園法制定後も、私権の行使以外、ほぼ何でも設置できる状態だった。ただ、経緯不明な既得権益に関わる設置管理許可については除外し、公園管理を「適正化」していく風潮がありました。そうしたなかでPark-PFI制度は、社会的な要請などに沿って民間施設を積極的に導入する方向に、公園政策を一変させたと思います。結果として、さまざまな民間事業者が参画し、類型化が不可能なほど多彩な施設運営の事例を見ることができます。
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