QURUWA戦略の策定後、岡崎市は次の段階として基幹プロジェクトである籠田公園、中央緑道のリニューアルを完了させた。日常の光景に変化が起こり、「明らかに潮目が変わった」と関係者は口をそろえる。
公共空間の使い手には、一般市民と、アクティビティーを誘発する役目の民間事業者の両方がいる。「好きに過ごし、見ず知らずの人と場所を共有する本来の公園の性質は大事にしたい。にぎわいや、稼ぎを上げる活動を強調しすぎないよう、バランスには注意が要る」。籠田公園〔写真1、2〕と中央緑道の設計を手掛けたオンサイト計画設計事務所代表取締役の長谷川浩己氏〔写真3〕はこう語る。
旧籠田公園に思い入れを持つ市民は多かった。「人が集まると聞くとネガティブな想像をしてしまう場合がある。近隣住民と一般市民の間にも認識のギャップがあるのが大変な点だった」(長谷川氏)
計画内容に合意を取るために、16~17年に4回の市民参加ワークショップを開催した。いくつかの面で解ききれない課題が残った。
例えば、新規事業の担い手を重視する動きに対し、当初は遠巻きに見ていた既存商店街との関係が悪化しかかった。また、商店街に接する籠田公園と違い、中央緑道は住宅街のなかを走る。沿道の不動産オーナーが、公園側とは異なる思いや不安を抱えていると分かってきた。
市のまちづくりデザインアドバイザーを務める東京芸術大学准教授の藤村龍至氏はこう語る。「公共性を実現する時の“自分ごと”という言葉の受け取り方などにも差がある。30代半ばなら美談として受け入れる。70代になると『私物化だ』と否定する。両者を意識していないと、あるところで引っくり返される。そこは公民連携の生命線になる」
そうしたなか、長谷川氏がデザインチームの一員に招いた小規模多機能自治の専門家、カントリー・ラボ代表取締役の宮崎道名氏が重要な役割を果たした。同氏は、自治会別の勉強会と並行し、計画地に接する複数自治会に対し、中学生以上を対象とする全住民アンケートを実施。そのプロセスが、まちの未来に対する危機感の共有を促し、市民それぞれが当事者感を持つきっかけになった。
設計過程では、「一貫し、最初の段階で形を示すようなスタンスを取りたくないと考えていた」と長谷川氏は振り返る。「何が欲しいかではなく、どういう時間を過ごしたいかを聞き、空間づくりに反映させる。極力そういう流れを心掛けた」(同氏)