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清水 義次氏 アフタヌーンソサエティ代表取締役
良質な民間事業を誘う再投資を
民間主導のリノベーション/公民連携まちづくりのプロデューサーとして活動すると同時に、公共資産に再投資する「大きいリノベーション」の大切さも唱える。これらがウォーカブル化の在り方と合致し、さまざまな都市で戦略策定に携わる(写真:日経アーキテクチュア)
民間主導のリノベーション/公民連携まちづくりのプロデューサーとして活動すると同時に、公共資産に再投資する「大きいリノベーション」の大切さも唱える。これらがウォーカブル化の在り方と合致し、さまざまな都市で戦略策定に携わる(写真:日経アーキテクチュア)

 米国であれば、エリアが衰退したならば公園などに対して公共が相応の規模で再投資を行い、再開発などを誘発させる。しかし、日本の都市ではいったん整備すると、いくら時代遅れになっても木の成長を見守るだけの場所として放置される。

 主体となる整備がオープンスペースなのであれば、維持・修繕や解体・撤去のライフサイクルコストは建物よりは軽減できる可能性がある。後に民間が主導する動きを起こせるような公共投資とすれば、都市の魅力の回復につながり得る。整備の行方を心配する岡崎市の方々には当初そう申し上げた。

 旧来のマンション開発とは異なる良質な民間投資を、地元の地権者は望んでいる。岡崎市で自治会が連合を組み、まちに能動的に関わり始めたのは、その意思の現れだ。見たことのない動きだが、本質的に重要な意味を持つのは間違いない。その良い部分をピックアップし、各地バージョンの展開が可能になるかどうか実態を観察しているところだ。

 新たに参入してくる民間事業者が、公民連携を担う部署と協議しながらエリアのための建物を計画してくれるのが理想的だ。岡崎市であれば都市施設課に、「我々に相談してください」というメッセージを発するように説いている。(談)

中島 伸氏 東京都市大学都市生活学部准教授
個人の利他性が公的な価値を持つ
神田のまちに精通し、関連の著者もある。ウォーカブルまちづくりに関し、「今までになかったものなので、いずれ地域にいる誰かとのハレーションが起こる時が来るに違いない。それをどう乗り越えるかが課題だと考えている」(中島氏)(写真:日経アーキテクチュア)
神田のまちに精通し、関連の著者もある。ウォーカブルまちづくりに関し、「今までになかったものなので、いずれ地域にいる誰かとのハレーションが起こる時が来るに違いない。それをどう乗り越えるかが課題だと考えている」(中島氏)(写真:日経アーキテクチュア)

 千代田区ウォーカブルまちづくり戦略検討会の委員として、区の「ウォーカブルまちづくりデザイン」の策定に関わった。民間の敷地(沿道建物)における事業活動や私的な取り組みにもウォーカブルに資する公的な価値を認める、大きなチャレンジのある内容だ〔図1〕。個人の利他性が公的な価値を持ち得ると位置付けたわけだ。制度によって担保されるので、難関だとされる警察協議を進める際にも裏付けとなる。

〔図1〕実証実験も年内に予定
〔図1〕実証実験も年内に予定
2022年6月策定の「千代田区ウォーカブルまちづくりデザイン」より。モデル活動となるプレイスメイキングの実証実験も年内に予定する(資料:千代田区)
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 また、第三者の団体や組織だけではなく、個別の商店主などが直接、建物の前面道路を活用できるようにする考え方を持つ。これも他に類がない。対象とする場所も、にぎわい創出が目的となる商店街などに限らず、路地や横丁の1本でも行政が直接支援する姿勢を取る。

 まちの歴史や特性を考慮し、1人ひとりの意識の向上を訴える施策だ。今後、運用面の議論に入る。(談)