建築の「顔」となるファサードが単なる装飾の範疇(はんちゅう)を超えて、建築の最先端技術が集まる部分となりつつある。脱炭素社会の実現に向けた環境配慮の高まりが、その動きを加速させた。今後のファサードは、デジタル技術も駆使しながら、デザインと機能の高度な掛け合わせが求められる。最新事例の他、気鋭の設計者や技術者の取り組みなどから、ファサードの未来を探る。

ファサードの未来
装飾からの脱却、脱炭素・DXで変わる建物の「顔」
目次
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ホテル外装に国内初の設計技術、「膜壁」で光をコントロール
OMO7大阪 by 星野リゾート(大阪市)
短冊状の膜を5000枚超連ね、日射を約80%反射する──。星野リゾートのホテルが4月、大阪市に完成した。ファサードに国内初の設計技術を採用して、省エネ性能の向上やヒートアイランド現象の緩和を図った。
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壁面を覆う無数の木製クロス、独自の塗料で経年劣化を防ぐ
上智大学四谷キャンパス15号館(東京都千代田区)
建物の木造化・木質化が広がり、木のファサードも増えてきた。5月には無数の木製クロスで外装を覆った上智大学の新校舎が完成。設計・施工を手掛けた住友林業は、木材の経年劣化を防ぐ工夫を施した。
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“永山ドレス”で都市の象徴に、特殊加工で光の反射をデザイン
東急歌舞伎町タワー(東京都新宿区)
2023年春に開業を控えた「東急歌舞伎町タワー」。特徴的な外装デザインは、ガラス表面に特殊加工を施して光の反射を制御したものだ。デジタル技術を駆使して見え方を検証し、印刷する模様をミリ単位で調整した。
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意匠と高機能の融合が加速、デジタルで“無理難題”を形に
時代の変化に伴って、ファサードに求められる役割も多様化してきた。ファサード設計で長年、著名な設計者たちの“カウンターパート”として活躍してきた2人のキーパーソンに、次世代に向けた潮流を聞いた。
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外皮こそ脱炭素に“即効”、新発想のファサードを次々開発
山梨知彦氏(日建設計CDO)
ファサードの名手である、日建設計の山梨知彦チーフデザインオフィサー(CDO)は、2030年以降に向けた挑戦を既に始めていた。メディア初公開の新型ルーバーなど、アイデアは尽きない。
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高さ500mの暴風に耐える外装、実大性能試験で最適設計
日本でも高さ400m級の超高層建設が現実味を帯びてきた。従来の想定を超えた「超・超高層」には、これまでにない風荷重が作用する。清水建設は世界最高性能の試験装置をフル活用し、外装の最適設計に挑む。
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波のようにうねるガラス外装、「化学強化」で大曲率を実現
透明なガラスが波のようにうねる。清水建設が2021年に発表した「3次元曲面ガラススクリーン構法」の実大モックアップだ。一般的な曲面ガラスを超えた曲率を実現したこの技術は、実用化に向け、詰めの検証に入っている。
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外装に話題のIoTガラスを採用、遠隔で色調制御や破損確認も
お堀の眺望を確保しつつ、どうやって西日を抑えるか──。7月に竣工した「九段会館テラス」では外装に、米スタートアップ企業が開発したIoTガラスを導入。施設からの眺望の確保と省エネ性能の向上をかなえた。
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AIで外観デザインを爆速提案、バリエーションは「1秒で40枚」
設計者がサラサラと描いたスケッチを基に、ファサードデザインのバリエーションが出力され、そのまま3Dモデルとして立ち上がる──。提案初期段階の「たたき台」づくりで、そんなAI(人工知能)活用が始まろうとしている。
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高性能化するガラスの世界、創エネ外装に向けた挑戦も
都心で立ち上がっている一般的な大規模超高層ビルは、外装が四周で計4万m2程度といわれる。省エネや創エネの余地が残る、ファサードにかかる期待は大きい。脱炭素化に向けた開発競争はさらに熱を帯びてくる。
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脱炭素・DXで存在感増す、ファサードの未来
ファサードの未来はどこへ向かうのか。設計事務所、建設会社、エンジニアリング会社、それぞれの設計者に今後の展望を聞いた。