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優れた人材を確保しようと、賃上げや働き方改革などに取り組む設計事務所は少なくない。採用される立場の学生は、そんな設計事務所をどう見ているのか。都内の国立大学大学院に通う学生4人が本音で語った。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
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設計事務所のどのようなところを見て就職先を検討しますか?

A 大規模な組織設計事務所にせよ、アトリエ系にせよ、その設計事務所に通底している“思想”に共感できるかどうかが一番重要だと思っています。だから、その事務所が手掛けたプロジェクトを見ます。

B 僕は作風よりも、建物の用途と規模をチェックしますね。将来的に大規模な公共建築を設計してみたいので、それができる企業かどうか。あとは売上高も見ます。特に海外業務に注目します。

C 私も同じ。売上高全体に占める海外業務の比率が気になる。今後、国内の建築需要は落ちていくでしょう。将来も安定して設計の仕事を続けるには、現段階である程度、海外業務を手掛けている企業に就職する必要があると考えています〔図1〕。

〔図1〕設計事務所の海外業務比率は?
〔図1〕設計事務所の海外業務比率は?
2021年度の設計・監理業務売上高の上位25社のうち海外業務の売上高を回答した企業について、設計・監理業務売上高に占める海外業務比率ランキングを作成した(資料:日経アーキテクチュア)
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D 最近気になっているのは、教育体制が充実しているかどうか。もともとはデザインを重視している設計事務所を志望していたため、所員10人ほどの有名アトリエ事務所でアルバイトを始めました。働いてみると、各人が別々にプロジェクトを切り盛りしているような状況で、若手を教育できる体制ではない。このような環境でキャリアをスタートするのはよくないと思うようになりました。

給与についてはどの程度気にしていますか?

A お金儲けの手段としてではなく、純粋に建築を考えたいという思いが強いので、それほど気にしていません。でも、企業としてマネタイズできているかどうかは大事ですよね。月給が20万円を下回るのは、どうかと思います〔図2〕。

〔図2〕売上高トップ10の企業の初任給
〔図2〕売上高トップ10の企業の初任給
日本設計と梓設計は日経アーキテクチュアの取材に回答した数字。ほかはウェブサイトなどで公表している値。久米設計は裁量手当、山下設計は残業手当などを含む(資料:日経アーキテクチュア)
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C 私が内定をもらった大手建設会社の初任給は26.5万円。決して低くはありませんが、今の時代、建設業界以外であれば、その2倍近くもらえる会社もありますし、そういった企業に就職する同級生もいます。給与が高いに越したことはないですが、私は設計がやりたかったので、ある程度お金は割り切って考えました。

D 先ほどお話しした有名アトリエ事務所は時給500円。アルバイトの期間が長くなるにつれて、金銭面への不安が募っています。所員さんにも「アトリエ系はこんな感じだよ」と言われ、自分のライフスタイルを守りながら働き続けられる環境のほうがよいのではないかと感じるようになりました。初任給は25万円を基準に考えています。

B 僕も25万円がラインです。本当は給与のことをもっと企業に聞きたい。でも残業代が出るかどうかなど、お金の話を詳しく聞くことがタブーのように感じられ、質問しづらい。大学のOBなど、親しい人に聞くしかありません。