脱炭素で住宅の断熱が大きく変わる。対応は待ったなしだ。2025年の省エネ基準適合義務化に合わせて、国が省エネ関連の基準整備を急ピッチで進めている。住宅性能表示制度の断熱等性能等級もその1つ。ZEH水準の等級5が22年4月に施行。22年10月にはさらに上位の等級7と6が施行される。「断熱等級7は技術革新を促すための基準」と言われるほど高いレベルだ。高断熱住宅に先駆的に取り組む設計者や施工者の先行事例を取材するとともに断熱材メーカーや、大手住宅メーカーの対応状況を追った。

新設 断熱等級7に挑む
上位等級に対応する仕様とコストを徹底分析
目次
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上位等級が相次ぎ登場、等級7は技術革新を促す基準
国土交通省は、2022年4月の断熱等級5に続いて、10月に等級6と7を施行する。等級7は、現行の断熱等級4よりも一次エネルギー消費量を4割削減できる水準だ。「技術革新を促す高い基準」と位置づけられている。
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建物をコンパクトにして高断熱性能の費用を捻出
「雪国ハーフ住宅」は外皮平均熱貫流率(UA値)が0.18と、5地域の断熱等級7で想定する0.26を大きく上回る。高性能の断熱材や窓にかかる費用を捻出するため、建物の面積を抑えワンルーム化するなどの工夫を施した。
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外装材別に付加断熱を使い分け、左官仕上げは湿式外断熱を採用
松山市で断熱等級7レベルの住宅に取り組む工務店、アーキテクト工房Pureは、外壁の仕上げ材に応じて、付加断熱の工法を使い分けている。特に、左官仕上げの場合は、通気層のない湿式外断熱工法を採用した。
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高断熱化したワンルーム空間に座りたくなる場をさりげなく配置
高断熱住宅は、空調の効率を追求すると「がらんどう」のワンルームになりがちだ。ワンルームの空間に、ちょっと座りたくなる場所をさりげなくしつらえる。性能と意匠にこだわった住宅を紹介する。
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等級7の材料費は等級4の3倍、付加断熱や3層ガラスで大幅増
断熱等級5~7を実現するためのコストアップはどれくらいか。こんな実務者の疑問に答える試算を経済調査会が実施した。現行の省エネ基準の断熱等級4と比較すると、等級7は材料費だけで約3倍となった。
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外壁の等級7は付加断熱で一致、天井か屋根かは提案分かれる
断熱等級6と7を満たすには、どんな仕様にすればよいか。日経アーキテクチュアは断熱材メーカ6社から提案を得た。各社の回答を見ると、東京を含む6地域では、等級6が外壁の付加断熱なし、等級7が付加断熱での対応となりそうだ。
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断熱性能の達成だけでは不快に、付加断熱は垂れのリスクを伴う
断熱等級7レベルの住宅は、設計・施工とも難度が上がる。安易に導入すると住み心地が悪くなったり、施工ミスが発生したりする恐れがある。高断熱住宅の設計・施工に詳しい識者に注意点と対策を聞いた。
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ZEH基準の等級5は標準仕様に、等級7への対応は「検討中」
日経アーキテクチュアは、大手住宅メーカーに対して、住宅性能表示制度の断熱等級への取り組みについて調査した。各社ともZEH基準に相当する断熱等級5を標準にしながら、新設される断熱等級6や7への準備を進めている。