断熱等級7レベルの住宅は、設計・施工とも難度が上がる。安易に導入すると住み心地が悪くなったり、施工ミスが発生したりする恐れがある。高断熱住宅の設計・施工に詳しい識者に注意点と対策を聞いた。
断熱等級7レベルの住宅は、外皮設計から窓の設計・施工まで多岐にわたる注意点がある。ここでは、トラブルにつながりかねないポイントを見ていこう〔図1〕。
外皮設計で重要なのは、部位同士の断熱性能の差を極力なくすことだ。高断熱住宅のトラブルに詳しい住まい環境プランニング(盛岡市)の古川繁宏代表が注意を呼び掛けるのは、外皮平均熱貫流率の基準値をクリアしているが、外壁や窓、床、天井などの断熱性能の差が大きいケースだ。
熱は相対的に断熱性能の低い部分から逃げる。そのため窓の表面結露が発生したり、居住者が足元の寒さを感じたりする恐れがある。夏は、天井からの熱で2階が寝苦しくなることもある。
古川代表は「断熱性能の差を減らすための優先順位を付けるなら、1番目がもともとの性能が低い開口部。2番目が床もしくは基礎と、天井もしくは屋根。外壁は最後でいい」と説く。
外皮設計では、冷房と暖房の負荷を減らす窓の対策も求められる。例えば、断熱性能を高めた住宅では、熱が逃げにくくなる「熱ごもり現象」が発生して、冷房負荷が大きくなることが懸念される〔図2〕。対策としては、遮熱ガラスやひさし、外付けブラインドなどの日射遮蔽に加え、通風の確保が重要になる。
悩ましいのが、夏の冷房負荷を下げるために日射の取得を減らすと、冬の暖房負荷が増す場合があることだ。日射の取得は、夏と冬のバランスが重要になる。
HEAT20と呼ばれる一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会の設立メンバーで、北海道立総合研究機構の鈴木大隆理事は、「どのようにすれば冷暖房負荷が最も減るか。断熱等級7レベルでは、断熱性能と日射熱取得性能を、窓1つ1つについて検討する必要がある」と話す。HEAT20ではその解決に役立つ、窓の断熱性能と日射熱取得性能を考慮した、熱収支の計算ツールを開発中だ。