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建設現場の生産性向上などを目的に、ゼネコンが研究開発投資を増やし続けている。売上高上位企業の研究開発費は、10年足らずで倍増した。ただし、まだまだ目に見える成果が上がっているとは言いがたい。

 日経アーキテクチュアの経営動向調査に回答した建設会社のうち、2021年度に投じた研究開発費(単体、建築や土木の合計額)が最も多かったのは鹿島で、約165億円だった。土木部門を持つ他のスーパーゼネコン3社も、それぞれ単体売上高の1%強に当たる150億円超を投じていた〔図1〕。

〔図1〕建設会社の研究開発費は増加傾向
〔図1〕建設会社の研究開発費は増加傾向
日経アーキテクチュアの調査に回答した建設会社の研究開発費(単体)。建築だけでなく、土木なども含む。竹中工務店は、建設ロボット制御プラットフォームや現場の業務効率化アプリ開発などを挙げた。長谷工コーポレーションは生産情報のデジタル化により、生産性向上や業務の効率化を目指す(資料:日経アーキテクチュア)
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 21年度の研究開発費ランキング上位20社のうち、上述の4社を含む13社が、22年度に開発費を積み増すと回答した(3社は無回答)。

 この数年、建設会社は研究開発費を毎年のように増やしている。大手5社に前田建設工業、長谷工コーポレーション、五洋建設、戸田建設、三井住友建設を加えた10社(いずれも単体)が21年度に投じたのは計約877億円。22年度は計900億円を超える見込みだ〔図2〕。10社の13年度の開発費は連結でも計453億円。10年足らずで倍増することになる。

〔図2〕研究開発費(単体)は毎年のように増加

大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店、前田建設工業、長谷工コーポレーション、五洋建設、戸田建設、三井住友建設の研究開発費の合計値。竹中工務店は2022年度の予定を無回答としたため、21年度並みの95億円と仮定して予想(資料:日経アーキテクチュア)
大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店、前田建設工業、長谷工コーポレーション、五洋建設、戸田建設、三井住友建設の研究開発費の合計値。竹中工務店は2022年度の予定を無回答としたため、21年度並みの95億円と仮定して予想(資料:日経アーキテクチュア)
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建設ロボットの開発やBIMを活用した建設生産の革新などが主要なテーマだ

 各社の注力分野は、施工管理システムや建設ロボットの開発など、デジタル技術で業務プロセスなどを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。

 研究開発が盛んになるにつれ、浮き彫りになった課題もある。各社が同じような技術を個別に開発することで生じるリソースの無駄使いなどが代表例。課題を解決しようと、建設会社間の連携が進みつつある。21年9月に発足した「建設RXコンソーシアム」だ。8月30日時点で、ゼネコンで構成する正会員は25社。IT企業などから成る協力会員は88社まで急拡大した〔写真1〕。

〔写真1〕建設会社の「協調」は進むか
建設RXコンソーシアムの副会長を務める竹中工務店の村上陸太常務執行役員(写真:日経アーキテクチュア)
建設RXコンソーシアムの副会長を務める竹中工務店の村上陸太常務執行役員(写真:日経アーキテクチュア)
8月23日に開催した展示会の様子(写真:日経アーキテクチュア)
8月23日に開催した展示会の様子(写真:日経アーキテクチュア)
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コンソーシアムでは、「資材の自動搬送システム」「タワークレーン遠隔操作」など計9分野で分科会を設けて活動している