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延焼防止建築物とは、耐火建築物の代わりに75分準耐火構造を用いた建物だ。2019年施行の改正建築基準法で登場した。この規定を初めて適用した事務所ビル「KAZAGURUMA」(山口県防府市)を紹介する。(日経アーキテクチュア)

KAZAGURUMA(2021年)
  • 所在地=山口県防府市駅南町6-5
  • 地域・地区=商業地域、防火地域
  • 発注者=澤田建設
  • 設計=和建築設計事務所
  • 施工=澤田建設
  • 構造=木造(CLT)
  • 耐火性能=準耐火構造
  • 階数=地上2階
  • 延べ面積=141.58m2

 事務所としては日本初の延焼防止建築物である「KAZAGURUMA」は、延べ面積約140m2の小規模な建物だ。駅前の防火地域内に、CLT(直交集成板)パネル工法の壁や床、屋根を燃えしろ設計として、木材現しの空間をつくり出している〔写真1〕。

〔写真1〕駅前の防火地域内に立つ延焼防止建築物
〔写真1〕駅前の防火地域内に立つ延焼防止建築物
KAZAGURUMAの外観。澤田建設がCLTの情報発信拠点として建設した。駅前の防火地域内に立つため、耐火建築物とすることが求められる。ここでは、延焼防止建築物として耐火建築物と同等の耐火性能を確保した(写真:和建築設計事務所)
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 従来、防火地域内の事務所は、延べ面積100m2を超えると建築基準法61条(防火地域および準防火地域内の建築物)から、耐火建築物とすることが求められる。2019年6月に施行された改正建築基準法※注により、3階建て以下、延べ面積3000m2以下の場合に限り、従来の耐火建築物に加えて、外壁・軒裏に75分以上の高度な準耐火構造を使った延焼防止建築物で設計することが可能となった〔図1〕。

〔図1〕耐火建築物と延焼防止建築物の比較
〔図1〕耐火建築物と延焼防止建築物の比較
耐火建築物と延焼防止建築物の2つの選択肢がある。延焼防止建築物では、主要構造部を75分準耐火構造とする。この他、外壁開口部の面積制限や防火区画の面積などに違いがある(資料:安井昇)
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※注:延焼防止建築物などの詳細は 日本建築防災協会のウェブサイト からダウンロードできる

 KAZAGURUMAは、この延焼防止建築物(19年国土交通省告示193号)を適用し、間仕切り壁や床を1時間準耐火構造(19年国交省告示195号)としている。