連載第2回は、準耐火建築物の事務所ビル「住友林業筑波研究所新研究棟」(茨城県つくば市)を紹介する。エントランスの大空間や、集成材やLVLの構造躯体を燃えしろ設計とした点が特徴の建物だ。(日経アーキテクチュア)
- 所在地=茨城県つくば市緑ケ原3-2
- 地域・地区=工業専用地域、法22条区域
- 発注者=住友林業
- 設計・監理者=le style h/Atelier Asami Kazuhiro、住友林業
- 施工者=川田工業
- 構造=木造
- 階数=地上3階
- 延べ面積=2532.4m2
建築基準法では、防耐火の仕様に影響する重要な条文が3つある。法21条(大規模の建築物の主要構造部など)と法27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)、法61条(防火地域および準防火地域内の建築物)だ。事務所ビルは、法27条の制限を受けないため、法21条の建物高さや規模による防耐火構造制限と、法61条の防火地域規制による防耐火構造制限に基づいて設計する。
今回紹介する「住友林業筑波研究所新研究棟」(以下、筑波研究所)のように、防火地域・準防火地域以外の場合は、法21条の制限だけで設計できる。
準耐火が必要な高さ規定緩和
法21条1項の高さに関する規定は、2019年6月施行の改正建基法によって緩和された。耐火建築物または1時間準耐火建築物等が求められる高さが、改正前は「高さ13m超または軒高9m超」だったが、改正後は「高さ16m超」となった。
筑波研究所は、木造3階建て、延べ面積が約2500m2だ〔写真1〕。高さが15.29mなので1時間準耐火建築物で設計されている。現在なら、16m以下のため「その他建築物+防火壁等(延べ面積1000m2以内ごと)」または「45分準耐火建築物」のいずれかで設計できる。
ただし、その他建築物とした場合、延べ面積が1000m2を超えると、防火壁か防火床が必要になり、建物が分断される計画になりがちだ。一体性を重視する場合は、準耐火建築物とするのがお勧めだ。筑波研究所は改正法施行前だったので準耐火建築物とし、一体感のある空間となっている〔秀逸1〕。
準耐火建築物は一体感のある空間にできる
さらに、準耐火建築物にすれば、後述する避難安全検証による内装制限や竪穴区画の適用除外ができる。これによって内装の木質化を実現しやすくなる〔図1〕。