スポーツを見る・見せる──。日本でもそんな観客目線のスポーツ施設整備が急ピッチで進んでいる。試合を全力で盛り上げ、試合がない日も来訪者が途切れない。新たな「ドル箱施設」はつくれるか。
「チームはめちゃくちゃ弱くて試合に毎回負けるんだけど、たくさんのファンで盛り上がれて楽しい。そんなこともある。スポーツの魅力は『強い・弱い』だけではない」
スポーツ施設運営に詳しい追手門学院大学社会学部の上林功准教授はそう語る。同じ空間にファンが集まり、一体となって一喜一憂して盛り上がる体験、「スポーツ観戦」は今、新たな地域経済のうねりになろうとしている。
きっかけの1つが経済産業省とスポーツ庁が打ち出した「スタジアム・アリーナ改革」だ。2020年度から「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」の先進事例選定を開始、25年までに20事例の選定を目指している。
スポーツ庁は21年度時点で14事例を選定(計画段階含む)、「目標達成は確実」(坂本弘美・同庁参事官)な情勢だ。現在、22年度事例の選定が佳境に入っている〔図1~4、写真1〕。
国の狙いの1つが「観戦しやすさ」の重視だ。施設を熱心なファン以外でも楽しめる「スポーツホスピタリティー」を高めた拠点とし、地域経済の活性化を目指す。
整備構想はこれにとどまらない。政策投資銀行地域調査部PPP/PFI推進センターの田村恵大副調査役のまとめによると、進行中のスポーツ施設新設・建て替え構想は全国で計88件にもなる。内訳はスタジアム・球技場が45カ所、アリーナ・体育館が43カ所だ(スポーツ庁選定の先進事例含む、22年10月31日時点)。
PPP(官民連携)・PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の普及も後押しとなっている。政府は22年10月、民間事業者の自由度をより高める改正PFI法を国会に提出した。現在、スポーツ施設を含む様々な施設運営に参入した民間事業者の契約期間内の総収入に当たる事業規模は約26兆7000億円だが、政府は22年度からの10年間で同30兆円にまで拡大させる目標を掲げた。