2022年11月20日、サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会が開幕した。W杯の試合会場となるスタジアムは8施設。うち7つが新設スタジアムだ。日本国内に目を転じても、23年以降にスタジアムやアリーナが全国で次々と誕生する予定だ。世界の潮流を取り入れつつ、地域の特色を反映した建設計画が目白押しだ。人々を熱狂させるスポーツ、その舞台となるスタジアム・アリーナの最前線を追った。

熱狂のスタジアム・アリーナ
カタールW杯から国内最新事例まで徹底解説
目次
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コンテナ活用の仮設スタジアム、分解・輸送・再利用を容易に
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(1)
持続可能性を旗印に、スタジアムの後利用や建設時の環境配慮に注力してきたカタール。ドーハ南部に完成した「Stadium 974」には主に輸送用のコンテナを使用。サッカーW杯史上初の仮設スタジアムが誕生した。
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金色に輝く器形の巨大スタジアム、世界最大級の屋根は直径307m
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(2)
サッカーW杯カタール大会で優勝をつかみ取る国はどこか。決戦の舞台は英Foster+Partners(フォスター・アンド・パートナーズ)が設計した「Lusail Stadium(ルサイル・スタジアム)」だ。収容人数は最大8万人と、大会で使用する8つのスタジアムの中で最大規模を誇る。
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ザハ氏の“遺作スタジアム”、伝統的な帆船をモチーフに設計
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(3)
カタール東部のアル・ワクラに立つ「Al Janoub Stadium(アル・ジャヌーブ・スタジアム)」は、故ザハ・ハディド氏が設計を手掛けたスタジアムだ。開閉式の屋根と最先端の冷却システムによって、灼熱(しゃくねつ)の夏場でも快適な温度を維持する。
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夜に輝く「砂漠のダイヤ」、幾何学模様の外装が日差しを反射
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(4)
幾何学模様のファサードやライトアップした時の様子から「砂漠のダイヤモンド」と呼ばれるドーハのEducation City Stadium(エデュケーション・シティー・スタジアム)。収容人数は最大4万5000人。ファサードにそれぞれ異なる角度で配置した三角形のパネルが強い日差しを反射する。
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開会式会場のスタジアム、巨大なテントで施設を覆う
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(5)
開会式の舞台となった、カタール北部のアル・ホールに立つAl Bayt Stadium(アル・バイト・スタジアム)。この地域にかつて住んでいた遊牧民の伝統的なテントをモチーフとしたデザインが特徴だ。巨大なテント構造の屋根でスタジアム全体を覆っている。テントの大きさは372.5m×310mにもなる。
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伝統的な民族衣装がモチーフ、W杯後も地域拠点として活用
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(6)
中東の伝統的な織物の帽子「ガフィヤ」をデザインのモチーフにしているのがドーハのAl Thumama Stadium(アル・トゥマーマ・スタジアム)だ。収容人数は最大4万人。大会終了後はスタジアムの上層部を解体して最大2万人に削減し、上層のスタンド跡にはブティックホテルなどを設ける予定だ。
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環境配慮を徹底追求、建材の90%超がリユース品
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(7)
カタールの伝統模様をモチーフにした格子状のベールで包んだデザインが特徴のAhmad Bin Ali Stadium(アフメド・ビン=アリー・スタジアム)。建設には、同敷地に立っていた旧スタジアムの解体時に出た資材を活用。建築資材の90%以上がリユースまたはリサイクルしたものだ。
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唯一の既存スタジアム、アーチを残してスタンドを増設
Part1 カタールW杯に見るスタジアム建築の潮流(8)
日本代表がドイツ代表相手に勝利を収めたドーハのKhalifa International Stadium(ハリーファ国際スタジアム)は、8つのスタジアムの中で唯一の既存スタジアムだ。W杯開催に向けて大規模改修が実施された。特徴的な2つのアーチを残し、暑さ対策としてアーチ下部に張り出し屋根を架設。
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日本でも急ピッチで進む施設整備、黒字化「勝利の方程式」はあるか
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(1)
スポーツを見る・見せる──。日本でもそんな観客目線のスポーツ施設整備が急ピッチで進んでいる。試合を全力で盛り上げ、試合がない日も来訪者が途切れない。新たな「ドル箱施設」はつくれるか。
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ジャパネットが新施設に800億円、スポーツ事業で「長崎を元気に」
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(2)
サッカー場ではなく、「スタジアムシティ」。長崎県に本社を置く通販大手、ジャパネットHDが主導する複合スタジアムが長崎市で建設中だ。スポーツエンターテインメントを演出する新施設が、長崎を新たなワクワク感で包む。
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「街なか」スタジアムは広場一体、約3万人収容サンフレッチェ新拠点
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(3)
広島都市圏のど真ん中で新たな公共のサッカースタジアムが建設中だ。約8.5ヘクタールの公園に、広場と一体でスタジアムをつくる計画だ。広島の街に新たなにぎわいを生む、起爆剤の役割が期待されている。
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スタジアム上空を観光客が飛ぶ! 仙田流「にぎわいのつくり方」
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(4)
長崎スタジアムシティプロジェクト、広島サッカースタジアムの設計に携わるのが、MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島を成功に導いた名手、建築家の仙田満氏だ。2施設でも自ら提唱する「遊環構造」を用いたと語る。
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Bリーグの“改革”で建設ラッシュ、トヨタも挑む次世代アリーナ計画
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(5)
アリーナ建設計画を発表する自治体や民間企業が相次いでいる。発表された施設は“米国ばり”にエンターテインメント性を追求した施設ばかり。このアリーナ建設ラッシュを後押しするのが、Bリーグの構造改革だ。
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バスケをアリーナで観てほしい! ホーム施設整備は「一丁目一番地」
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(6)
世界水準のプロバスケットボールリーグを目指して、構造改革を進めている「B.LEAGUE(Bリーグ)」。メジャースポーツ化に向けて島田慎二チェアマンは、「アリーナ整備こそが一丁目一番地だ」と意気込む。
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運営側との連携深化図る梓設計、改修時代の本格到来に備える
Part2 建設続々、スタジアム・アリーナ新時代(7)
スタジアム・アリーナ設計で特に存在感を示しているのが、この分野のフロントランナーである梓設計(東京都大田区)だ。スポーツビジネスのプレーヤーとの協業深化を進める同社は、今後の市場をどうみているのか。