全1318文字

 「5年以内にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による建築確認を部分的にスタートさせる」。国土交通省住宅局建築指導課の宿本尚吾課長が2022年11月の建築BIM環境整備部会で宣言し、関係者に衝撃が走った。

 同省はこれまでも、BIMデータを用いた建築確認の実現に向けて検討を進めてきたが、具体的なスケジュールは示していなかったからだ。

 今後、確認データの書き出しや読み込みルールの作成、データを管理・共有するための共通データ環境(CDE)の構築などを進め、25年度にBIMデータによる確認申請の試行を始める。その2、3年後に正式にスタートを切るイメージだ〔図1〕。

〔図1〕BIM確認申請のターゲットは2025年度
〔図1〕BIM確認申請のターゲットは2025年度
国土交通省が建築BIM環境整備部会で示した、BIMの成熟度レベルと今後のスケジュール。2025年度にBIM確認申請の試行を始める。国交省は実現に向けて、まずは特定行政庁や小規模な指定確認検査機関も含め、くまなく電子申請に対応できる環境をつくる。確認申請の電子化率は、21年度第1四半期の時点で20%にとどまっているからだ。「個別にシステム開発をするのは非効率。国が音頭を取って、まとめてシステム開発をするような方法もあり得る」(国交省建築指導課)(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 現行法はBIMデータによる確認申請を認めていない。BIMデータは事前協議に使用し、本申請にはBIMデータから作成した図書の提出を要する。このため、確認申請書の様式を定めた建築基準法施行規則1条の3を見直す可能性が高そうだ。

予算規模を一気に40倍増

 並行してBIMの普及を後押しする。22年度第2次補正予算に計80億円を計上。中小事業者による建築プロジェクトに対してBIMソフトの利用費などを補助する「建築BIM加速化事業」を23年に実施する。これまでもモデル事業に年間2億円程度を投入してきたが、物価高を踏まえた政府の総合経済対策に位置付け、規模を一気に40倍に増やした。

 高額なソフトウエアの導入などに二の足を踏んでいた設計事務所や建設会社にとっては朗報だ。補助上限額は延べ面積1000m2以上、1万m2未満のプロジェクトの場合、設計費で2500万円、建設工事費で4000万円とする。