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 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の木造戸建て住宅は、断熱材の増加や太陽光発電設備の設置などが影響し、以前よりも固定荷重が大きくなる。そのため、国土交通省は2022年、重量化に対応して必要壁量の新たな基準値を設ける方針を示した。関係する法令などの施行は、省エネ基準適合義務化に合わせて、25年4月を予定している。

 構造関係規定の見直しに先立ち、同省は22年10月に基準案を公表した。基準の整備を進める間に設計される住宅についても、必要な壁量を確保できるようにするためだ。

 日経アーキテクチュアは、木造住宅の構造計算ソフトウエアを開発・販売するインテグラル(茨城県つくば市)の協力を得て、2階建てモデル建物(自立循環型住宅の温暖地用モデル)に基準案を適用し、現行基準と比較した〔図1〕。

〔図1〕モデル建物に基準案を当てはめた結果
〔図1〕モデル建物に基準案を当てはめた結果
国土交通省が公表した2つの方法で2階建てモデル建物(自立循環型住宅の温暖地用モデル)の必要壁量を計算し、それを満たすように耐力壁を配置した。現行基準(左の図)と比較すると、方法1(中央の図)は1階が3カ所、2階は2カ所の増加。方法2(右の図)は1階が9カ所、2階が5カ所の増加となった(資料:インテグラルの資料に日経アーキテクチュアが加筆)
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 国交省は基準案で、必要壁量を確保する方法を2つ示した〔図2〕。方法1では、外皮の仕様や太陽光発電設備の有無など個々の建築物の荷重実態に応じて必要壁量を算出する。方法2では、現行規定と同様に、一律の基準値を用いる。方法2は簡易に確認する方法であるため、方法1よりも安全側の値になる。

〔図2〕2つの方法を公表
〔図2〕2つの方法を公表
現行基準の必要壁量と、重量化を反映した基準案の比較。壁量計算には2つの方法があり、方法1では個々の建物に応じた必要壁量を算出できるため、自由度が高い(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 モデル建物に2つの方法をそれぞれ当てはめて現行基準と比較した結果、方法1では1階の耐力壁が3カ所、2階は2カ所増加した。一方、方法2は1階が9カ所、2階が5カ所の増加。方法2だとかなり壁の仕様変更が必要になる。