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 2022年の新設住宅着工戸数は、注文住宅と戸建て分譲住宅で明暗が分かれた。国土交通省によると、持ち家(注文住宅)の10月の着工戸数は前年同月比18.7%減。前年同月実績を下回るのは実に11カ月連続だ〔図1〕。大手住宅会社10社が公表した注文住宅の受注実績を見ても、22年は前年同月比でマイナスとなった月が多い〔図2〕。

〔図1〕持ち家は11カ月連続でマイナス
〔図1〕持ち家は11カ月連続でマイナス
持ち家(注文住宅)、戸建て分譲住宅、賃貸住宅の新設着工戸数の合計値と、前年同月比の推移(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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〔図2〕大手住宅会社の受注も苦戦中
〔図2〕大手住宅会社の受注も苦戦中
注文住宅などの月別の「受注金額」が、2022年1~11月で前年同月比減となった回数と、22年度の実績(累積、前年同期比)を住宅会社別にまとめた。戸建て分譲住宅の実績は「売上高」(資料:各社の発表資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 これに対して戸建て分譲住宅の着工戸数は、前年同月実績を上回る状況が18カ月も続いている。

 注文住宅離れの要因とみられるのは、資材高騰による住宅価格の上昇だ。住宅市場に詳しい住宅産業研究所(東京都新宿区)の関博計社長は、「在宅勤務の拡大などによるコロナ特需が一巡した後の価格上昇なので、注文住宅を希望する消費者は様子見の状態だ」とみる。

 戸建て分譲住宅の販売価格も資材価格の高騰で上がっているが、もともと価格が低いうえ、注文住宅よりは上昇幅が小さい。そのため戸建て分譲住宅のお得感が強まり、価格重視の消費者が流れている可能性がある。注文系の大手では、ローコスト路線のタマホームが唯一前年に比べて受注を伸ばしているのも、こうした仮説を裏付けている。

 ただし、関社長は「物価上昇の影響が戸建て分譲住宅にも表れ始めている」という。分譲最大手の飯田グループホールディングスは、22年1~9月の累積販売実績(棟数)が前年同期比6.5%減だった。23年の見通しについて関社長は「戸建て分譲住宅の新設着工は調整されるかもしれない。注文住宅の受注も、良くなる要素は見当たらない」と話す。