東京都心では2023年、高さ約330mの超高層ビルを擁する「麻布台ヒルズ」や渋谷駅桜丘口地区第1種市街地再開発事業のA街区など、計約23万坪もの新規オフィスの供給が予定されている〔写真1〕。19年ごろまでは年間平均で約16万坪、コロナ禍の21、22年は10万坪程度だった。23年は久々に大量供給の年となる。
働き方の変化が需要に影響
大量供給は賃貸オフィス市場にどのような影響を及ぼすのか。先行きを読み解くには、働き方の変化を踏まえる必要がある。
コロナ禍で、人々の働き方は大きく変わった。社会はウィズコロナに移行し、出社と在宅勤務を併用する「ハイブリッドワーク」がトレンドになりつつある。企業はオフィス面積の縮小一辺倒ではなく、対面コミュニケーションの場として魅力ある空間を求め、選別するようになってきている〔図1〕。
オフィス仲介大手である三幸エステートのチーフアナリストで、オフィスビル総合研究所の代表取締役でもある今関豊和氏は、「コロナ禍を経て、働き手は執務場所を選ぶようになり、オフィスには『通いたくなる理由』が必要になった」と語る。
今関氏は言う。「23年以降の竣工物件は、ウィズコロナ仕様だ。換気性能が向上し、交流スペースなど共用部が充実している。こうして競争力を高めたビルの賃料は上昇するだろう。一方、そうでないビルの賃料は相対的に下がる。全体としては上昇傾向だが、二極化が進むだろう」
同研究所は東京都心5区の賃料相場について、25年までにコロナ前の水準に近い坪単価2万3000円台まで回復するとみている〔図2〕。
では、空室率はどうか。同研究所は、25年まで緩やかな低下を続けるとみる。ただし、今関氏は「企業移転後の2次空室が顕在化すると、空室率は上がる。コロナ禍で、新しい働き方に対応した社内規則の更新などを理由に、契約後すぐに移転しない企業が増えた。そのためすぐには表面化しないが、移転が進めば、続々と2次空室が発生するだろう」と話す。