全878文字
PR

 東京電力福島第1原子力発電所の事故後、停滞していた日本の原子力政策が、電力の安定供給や脱炭素を旗印に再び動き始めた。経済産業省は2022年12月8日、既設炉の運転期間延長や、廃炉の決まった原発の次世代革新炉への建て替えなどを盛り込んだ行動指針案を提示〔図1、2〕。23年以降、議論が進みそうだ。

〔図1〕原子力の活用へ政策を転換
〔図1〕原子力の活用へ政策を転換
経済産業省が2022年12月8日に示した「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針(案)」の概要(資料:経済産業省)
[画像のクリックで拡大表示]
〔図2〕脚光を浴びる次世代革新炉
〔図2〕脚光を浴びる次世代革新炉
三菱重工業が電力会社と開発している革新軽水炉SRZ-1200のイメージ。従来の加圧水型軽水炉に比べて安全性が高い(資料:三菱重工業)
[画像のクリックで拡大表示]

 原発に対する国民の不安や不信感はなお根強く、曲折が予想されるものの、産業界からは歓迎の声が上がる。原発の建屋を建設してきたスーパーゼネコンも例外ではない。

 国内第1号の商用原発である東海発電所の建設を担当して以来、原子力建築の分野でトップを守ってきた鹿島は、政策の変化を受けて体制の再構築に乗り出す。

 同社の天野裕正社長は「社内でもう一度、人材の確保を進める」と語る。福島第1原発の事故で工事が中断した東通原子力発電所の建設再開を見据え、現場に経験者と若手を集めて技術伝承を進める。「残された時間は少ない」(天野社長)