ウクライナ危機や資材高騰に翻弄された激動の1年が過ぎ去り、新たな1年が幕を開けた。省エネ関連の規制強化にいかに対応するか。設計や現場のDXをどのように進めるか。課題山積の建築界を、2023年にちなんで、23の論点で読み解く。

建築界の論点2023
脱炭素に建築DX、資材高騰──。23の論点で激動の建築界を先読み
目次
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建設3Dプリンターは普及する?
建築DXはどうなる?(1)
特殊なモルタルをノズルから吐出して積層し、構造物を造形する建設3Dプリンター。その話題性は、建築界にとどまらず一般の人々をも魅了している。高島屋は2023年1月の初売りの目玉に、スタートアップ企業のセレンディクス(兵庫県西宮市)が3Dプリンターで造形した延べ面積約10m2の小屋「Sphere(スフ…
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BIM建築確認はいつ実現するのか
建築DXはどうなる?(2)
「5年以内にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による建築確認を部分的にスタートさせる」。国土交通省住宅局建築指導課の宿本尚吾課長が2022年11月の建築BIM環境整備部会で宣言し、関係者に衝撃が走った。
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住宅現場のDXは進むか
建築DXはどうなる?(3)
ほんの1時間ほどで、壁一面のサイディングを難なく施工し終わった──。これは、戸建て住宅に「サイディングプレカット」を適用するに当たって、2022年4月に静岡県沼津市で初めて実施された公開試験施工の模様だ。
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建設ロボットは現場で活躍できるか
建築DXはどうなる?(4)
「これだけのスピードで拡大するとは予想外だ」。建設RXコンソーシアムの会長を務める鹿島の伊藤仁専務執行役員は顔をほころばせる。鹿島、竹中工務店、清水建設を中心とする16社で2021年9月に発足した同コンソーシアムは、22年12月22日時点で正会員28社、協力会員126社の大所帯となった。
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メタバースは建築を進化させるか
建築DXはどうなる?(5)
3次元の仮想空間を舞台に様々なサービスを提供するメタバース。2021年にバズワードの仲間入りを果たし、22年は建設・不動産分野での活用事例も出始めた。23年以降もその熱気は収まりそうにない。
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ZEHで壁量はどの程度増えるか
脱炭素はどうなる?(1)
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の木造戸建て住宅は、断熱材の増加や太陽光発電設備の設置などが影響し、以前よりも固定荷重が大きくなる。そのため、国土交通省は2022年、重量化に対応して必要壁量の新たな基準値を設ける方針を示した。関係する法令などの施行は、省エネ基準適合義務化に合わせて、…
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太陽光義務化はどこまで広がる?
脱炭素はどうなる?(2)
戸建て住宅を含む新築建築物に太陽光発電設備の設置を義務付ける東京都の改正環境確保条例が、2022年12月15日に成立した。太陽光発電設備の設置義務化は、京都府と京都市、群馬県に続いて4番目。小規模な戸建て住宅も対象としたのは全国初だ。25年4月に施行する。
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断熱等級6・7は普及するか
脱炭素はどうなる?(3)
2022年、住宅性能表示制度に新たな上位等級として断熱等性能等級の6と7が加わった。等級6・7の達成を目指す新築住宅がどの程度増えるか、注目が集まっている。
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CLT建築は建てやすくなるか
脱炭素はどうなる?(4)
脱炭素に向けた取り組みが加速するなか、炭素貯蔵の観点からもCLT(直交集成板)に注目が集まる。CLTパネル工法の普及に向け、コストや設計・施工上の課題解消を目指す動きが目立つ。
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国産材活用は進むのか
脱炭素はどうなる?(5)
2021年のウッドショックと、22年のウクライナ危機に伴うロシア産材の禁輸措置で、輸入材の抱えるリスクが顕在化した。林野庁は有事に備え、21年時点で41.1%にとどまる木材自給率を引き上げようとしている。
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脱炭素コンクリートは普及するか
脱炭素はどうなる?(6)
世界が気候変動問題の解決に動くなか、脱炭素コンクリートの研究開発が活況を呈している。セメント製造過程で大量の二酸化炭素(CO2)を排出することから非難の的になりがちなコンクリートにCO2を固定し、つくればつくるほど環境問題に貢献するというパラダイムシフトを起こそうとしているのだ。
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難解な「脱炭素キーワード」をおさらい
脱炭素はどうなる?(7)
脱炭素に関連するキーワードには、難解で取っ付きにくいものが多い。とはいえ、企業を顧客に事業展開する設計事務所や建設会社にとっては必須の知識だ。2023年以降も欠かせないキーワードを改めておさらいしておこう。
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建設会社の利益率は回復するか
企業経営はどうなる?(1)
受注競争の激化で減収減益に苦しむ建設会社が多かった2021年度決算。では、22年度の業績はどうなるか。建設経済研究所が22年12月に発表した、主要建設会社40社の23年3月期第2四半期決算分析によると、建築の受注高(単体)は大手・準大手・中堅の全階層で増加した。40社の合計値は約4.4兆円で、前年…
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資材高騰はいつまで続くか
企業経営はどうなる?(2)
建築資材の価格上昇が、以前に比べて落ち着いてきた。木材は価格が下落に転じ、鋼材は高止まりしているものの天井感が漂う。
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インボイス制度の影響は?
企業経営はどうなる?(3)
インボイス制度、正式には消費税制の「適格請求書保存方式」が、2023年10月1日からついに始まる。事業者が消費税の確定申告を行う際、適格請求書(インボイス)の要件を満たさない場合は控除対象として認めない仕組みだ。
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工事請負契約は変わるか
企業経営はどうなる?(4)
鋼材などの資材価格高騰を受けて、価格転嫁を巡る受発注者間の駆け引きが盛んだ。
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2024年問題への備えは万全か
企業経営はどうなる?(5)
2024年4月1日から、時間外労働(残業時間)の上限規制が建設業に適用される。時間外労働を原則月45時間以内かつ年360時間以内に抑える内容だ。労使協定を結んだ場合も年720時間以内などの特例基準を守る必要がある。
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大阪・関西万博は大丈夫か
建築市場はどうなる?(1)
2025年の大阪・関西万博で大阪府・市などが出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」(以下、大阪パビリオン)の施工者が、すったもんだの末に竹中工務店に確定した。発注者の一般社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン(以下、社団法人)は22年11月25日、同社と98億8900万円(税込み)で契約を結…
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注文住宅の凋落に歯止めはかかるか
建築市場はどうなる?(2)
2022年の新設住宅着工戸数は、注文住宅と戸建て分譲住宅で明暗が分かれた。国土交通省によると、持ち家(注文住宅)の10月の着工戸数は前年同月比18.7%減。前年同月実績を下回るのは実に11カ月連続だ。大手住宅会社10社が公表した注文住宅の受注実績を見ても、22年は前年同月比でマイナスとなった月が多…
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オフィス大量供給問題の影響は?
建築市場はどうなる?(3)
東京都心では2023年、高さ約330mの超高層ビルを擁する「麻布台ヒルズ」や渋谷駅桜丘口地区第1種市街地再開発事業のA街区など、計約23万坪もの新規オフィスの供給が予定されている。19年ごろまでは年間平均で約16万坪、コロナ禍の21、22年は10万坪程度だった。23年は久々に大量供給の年となる。