東京・六本木に立つ「EQ House」のファサードには、植物をモチーフとした開口が不規則に並ぶ。コンピューターシミュレーションを使って明るさや熱負荷、コストが最適となる木漏れ日空間を生み出した。(日経アーキテクチュア)
木漏れ日と洞窟──。インテリアの起源には、この2つの空間があると私は考えている。
かつて人間は身の危険を感じると、安全性や快適性のよりどころを求めて大きな樹木の下や洞窟に逃れたに違いない。生命体である樹木の下は、外と内がつながり、木漏れ日や風、鳥のさえずりと共存する場だ。対照的に、洞窟内は無機質で外部と隔てられ、自分を見つめる場にもなる。人間が生み出すインテリアも、これら2つの要素を含有しているのではないか。私たちの意識の中にも、これらを求める遠い記憶が刻まれているかもしれない。
私の設計例のうち2019年に竣工した「EQ House」(東京都港区)は木漏れ日を体現したものといえる。多孔パネルで外皮を覆い、木に包まれるような空間を生み出した〔写真1〕。