2025年に全面施行する改正建築基準法や改正建築物省エネ法。住宅の省エネ基準の適合義務化や4号特例の縮小をはじめ、建築のルールが大きく変わる。関係する基準案などが公表され、制度の詳細が明らかになってきた。改正に対し、建築界からは不安の声も上がる。「2025年問題」への対策は待ったなしだ。特集では建基法や建築物省エネ法の「脱炭素大改正」のポイントをいち早く解説。働き方改革や安全・安心に関連した法改正の話題を含め、建築実務への影響を探った。

早わかり法改正 2025年問題 改正法対策待ったなし!
動き出した「脱炭素大改正」、建築のルールが変わる
目次
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「脱炭素大改正」で実務が激変、業務負担増に対応できるか
2022年6月に公布された、改正建築物省エネ法と改正建築基準法。25年4月予定の全面施行に向け、大改正の詳細な内容が明らかになってきた。同時に改正法の円滑な施行には、大きな課題があることも見えてきた。
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2025年は「脱炭素」への通過点、30年にはZEH水準に引き上げ
宿本 尚吾氏 国土交通省住宅局建築指導課長
2025年に改正建築物省エネ法や改正建築基準法が全面施行され、建築確認の手続きが変わる。この大改正を推し進めるのは、国土交通省住宅局建築指導課長の宿本省吾氏だ。円滑施行を実現する方策を聞いた。
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ZEH壁量が新たに登場、早見表で計算省略する方法も
太陽光パネルや高断熱窓サッシなどにより省エネ住宅は重量化の一途をたどっている。国土交通省は2022年10月、そうした木造建築物を想定した壁量の基準案を公表した。23年秋に公布、25年に施行する予定だ。
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欠かせぬ建築士のリスキリング、構造設計者が足りなくなる
木造住宅の設計において、今後、技術基準改定に翻弄されないためには、構造計算も必要になる。ただ、木造住宅を手掛ける構造設計者はまだ数少ない。建築士にとっては再学習(リスキリング)を始めるチャンスだ。
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審査省略制度の見直しに懸念、大規模の修繕・模様替えは要確認
4号特例の見直しで影響が大きいのは、2階建て以上・延べ面積200m2超の建築物に、大規模の修繕・模様替えを行う場合だ。新たに建築確認の審査の対象となり、構造関係規定などの図書の提出も必要な場合がある。
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耐火性能に90分と150分が追加、中高層ビルの木造化を促進
中高層ビルを木造化する際、大きな壁となるのが防火規定だ。5階建てを境に、2時間耐火性能が必要となる。国土交通省は、60分刻みだった耐火性能を30分刻みに変更することで、耐火性能基準の合理化を図る。
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倉庫の庇の建築面積で緩和措置、不算入範囲を1mから5mへ拡大
建築物の庇は外壁などの中心線から1mの範囲に限り、建築面積に算入しない。この現行法を、物流倉庫などに限って5mまで緩和する。延べ面積への不算入も検討しながら、2023年4月1日の施行を目指す。
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断熱改修や庇設置などを促進、高さや建蔽率に特例許可
国土交通省は建築分野の省エネ対策として、既存ストックの省エネ改修や再生可能エネルギー設備の設置を促進する。高さ制限や建蔽率、容積率などの集団規定を、特例許可制度で緩和する。
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24年に省エネ基準を引き上げ、用途ごとに0.75~0.85の3段階
2024年4月に大規模非住宅建築物の省エネ基準を引き上げる。30年に新築建物で確保するZEB水準(誘導基準)に向けた中間点という位置づけだ。用途別の適合状況を踏まえ、0.75~0.85の3段階で設定した。
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分譲マンションのトップランナー、BEI0.8や強化外皮基準目指す
改正建築物省エネ法では、より高い省エネ性能への誘導策として2つの施策を盛り込んだ。1つは、住宅トップランナー制度の対象拡充。もう1つは、一般の建物利用者向け表示ラベル制度の見直しだ。
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新築住宅に太陽光発電を義務化、未達成の場合は企業名公表も
東京都は2025年4月から太陽光発電設備の設置を義務化する。義務を負うのは住宅の購入者ではなく、住宅供給事業者だ。住宅会社からは困惑の声も聞こえてくる。都が示す新制度の内容を読み解く。
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「2級建築主事」が間もなく登場、主事資格にも大改革の波
建築基準適合判定資格(通称、主事資格)の受検資格見直しに向けた準備が進んでいる。現行の建築士試験と同様に実務経験要件を外すほか、「2級建築主事」を創設して、小規模建築物における審査者を増やす。
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「アナログ規制」一挙見直し、中間・完了検査などデジタル化へ
目視や常駐など、時代遅れだが仕方ないと思われがちだった制度の変革期がついに訪れる。政府は、9669条項に及ぶ「アナログ規制」などについて、2024年6月までに見直す方針を打ち出し、その工程表を示した。
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「退避区画」で一時避難を可能に、直通階段1つの建物に改善促す
国土交通省は、2方向避難が困難な既存不適格建築物に「退避区画」の確保を求めるガイドラインを公表した。きっかけとなった大阪・北新地のビル放火事件からおよそ1年、いよいよ具体的な対応策が動き始める。
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市街地上流の盛り土を許可制に、熱海土石流を受け規制強化急ぐ
国は、危険な盛り土を全国一律の基準で規制する「盛り土規制法」を施行する。土砂流出で市街地に被害を与えそうな区域を、都道府県などが「規制区域」に指定できる。施行後5年以内に全国で指定完了を目指す。
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解体・改修のアスベスト対策、事前調査の資格者制度を開始
解体・改修する際、全ての建物に必要なアスベスト含有建材の事前調査。その実施を資格者に限定する制度が2023年10月にスタートする。厚生労働省は11万~12万人の資格者が必要と試算しており、育成が進んでいる。