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2009年発行の著書『BIM建設革命』で、日本における建築BIMの潮流をつくり出した日建設計の山梨知彦常務〔図1〕。BIM元年とされる09年から14年を経て、BIMの現在地と未来をどのように分析しているのか。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)

山梨 知彦(やまなし ともひこ)
日建設計チーフデザインオフィサー 常務執行役員
1960年生まれ。84年東京芸術大学美術学部建築科卒業、86年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了、日建設計入社。「NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」(2011年)、「桐朋学園大学調布キャンパス1号館」(14年)で日本建築学会賞(作品)を受賞

〔図1〕国内でいち早くBIMを紹介
〔図1〕国内でいち早くBIMを紹介
世界の潮流を踏まえ、日本国内でいち早くBIMを紹介した書籍『BIM建設革命』。2009年2月発行。価格は2200円(税込み)(資料:日本実業出版社)
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『BIM建設革命』を著した2009年と比べて、BIMを取り巻く状況はどのように変わったと感じますか。

 BIMは設計者と施工者、建築主の3者が使い、データを相互利用するのが理想ですよね。あの本を出した09年ごろは、「うまくいくのか」「理想を高く掲げすぎている」と、多くの建設会社や設計事務所が導入を様子見していたように思います。

 それから14年が経過し、ゼネコンや大手設計事務所が「デジタル」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を冠した部署を設けることが当たり前になった今、BIMの存在感は以前に比べて大きく高まりました。それでも、今はまだ理想の実現に向けた“準備段階”で、建築の設計や施工、維持管理を通じてBIMデータをいかに活用するかが、これからの大きな課題だと感じています。

国土交通省は25年にBIMによる確認申請の試行を始めることを目標に掲げました。

 シンガポールでは10年ほど前から、一定規模を超える建築物を新築する際にBIMデータの提出を義務付けています。25年という時期は、そうした国と比較すると遅いような気がしますが、BIMソフトの成熟度などを考慮すると、むしろローンチするには良いタイミングではないでしょうか。

 属性情報を抱えてしまったがために、初期のBIMソフトはデータが重く、レスポンスが良くありませんでした。(白紙撤回となった)新国立競技場の設計時には、とても苦労した思い出があります。

 しかし、近年はソフトやコンピューターの性能が高まり、実用的なスピードで扱えるようになってきたと実感しています。