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日本とドイツで環境建築を実践する設計者が起業し、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを用いて誰でも簡単に省エネ計算ができるクラウドサービスを開発した〔写真1〕。既に複数の企業が導入を検討中だ。

〔写真1〕BIMデータを省エネ計算に活用する
〔写真1〕BIMデータを省エネ計算に活用する
開発したサービスについて説明する金田真聡代表取締役。one buildingは金田氏と桑島隼也代表取締役が2021年6月に設立した。これまでに累計2.6億円を調達。1次エネルギー消費量や二酸化炭素排出量、年間光熱費の削減効果などを算定する受託サービスも手掛ける(写真:日経アーキテクチュア)
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 確認申請の直前なのにBEI(1次エネルギー消費量基準)が1.0を上回った。このままでは省エネ適判を通過できない──。背筋の凍るような経験をした読者はいないだろうか。

 このような事態が起こる背景には、省エネ計算を外注に依存する建築界の構造がある。省エネ性能を把握しないまま設計を進め、実施設計が終わった段階で計算を外注するので、申請直前に仕様の見直しを迫られるような状況を招いてしまう〔図1〕。

〔図1〕省エネ計算を繰り返しながら設計を進める
〔図1〕省エネ計算を繰り返しながら設計を進める
現在の設計フローと、「BIM sustaina for Energy」を活用した設計フローの比較(資料:one buildingの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 「本来、建物の省エネ性能を把握しながら設計を詰めていくことが、建物の性能を高め、コストを予算内に抑えるうえで重要だ」。こう語るのは、建設会社勤務を経てドイツに渡り、日独で環境建築の設計などを手掛ける金田真聡氏。設立2年弱のスタートアップ企業、one building(ワンビルディング)(東京都港区)の代表取締役でもある。

 省エネ計算を織り込んだ設計プロセスへの変革を進めようと起業し、2022年11月に「BIM sustaina for Energy」と呼ぶクラウドサービスを始めた。特徴は、BIMモデルから開口部などの仕様をファイルに書き出し、クラウドにアップロードするだけで計算を実行できる手軽さにある。