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JR静岡駅前から繁華街を500mほど歩くと、円弧状断面のスラブを3枚重ねた建物に出くわす。竹中工務店がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)でつくり込んだ野心的な自社プロジェクトだ。

 30人弱が働く竹中工務店静岡営業所は、鉄筋コンクリート(RC)造3階建て、延べ面積約360m2の小規模なオフィスながら、異彩を放つ建築物だ〔写真1〕。その内外観を特徴づけるのが、下方へ円弧を描くRCのスラブ。1階をピロティとするために、間口約18mを1スパンで飛ばそうと導き出した。断面が湾曲した金属製巻き尺が自立するのと同じ原理だ。

〔写真1〕円弧断面のスラブで気積を最大利用
〔写真1〕円弧断面のスラブで気積を最大利用
竹中工務店静岡営業所は鉄筋コンクリート造3階建てで、1階がピロティ形式の駐車場、2階が共創スペース、3階が執務エリア。1階に柱頭免震を採用し、2021年10月末に竣工した(写真:TOREAL)
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竹中工務店静岡営業所は鉄筋コンクリート造3階建てで、1階がピロティ形式の駐車場、2階が共創スペース、3階が執務エリア。1階に柱頭免震を採用し、2021年10月末に竣工した(写真:エスエス)
竹中工務店静岡営業所は鉄筋コンクリート造3階建てで、1階がピロティ形式の駐車場、2階が共創スペース、3階が執務エリア。1階に柱頭免震を採用し、2021年10月末に竣工した(写真:エスエス)
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図はスラブ内に納めた設備機器(資料:竹中工務店)
図はスラブ内に納めた設備機器(資料:竹中工務店)
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 スラブ内には全ての設備機器を格納。南側の開口部からは、吊り物が一切ない天井の曲面をなめるように光を取り入れている。

 設計を担当した竹中工務店名古屋支店設計部の小杉嘉文チーフアーキテクトは、「普通は選択し難い架構だが、課題が多いからこそ、自社プロジェクトで限界を追求した」と言う。テーマは『気積の最大利用』。無駄のない空間を極限まで突き詰めつつ、高い品質を実現するために欠かせないのがBIMの存在だった。

 竹中工務店では、設計者や協力会社などがそれぞれの専門性を最大限に発揮できるソフトウエアを使用し、IFC(BIMの標準データフォーマット)で書き出したモデルをSolibri(ソリブリ)やStreamBIM(ストリームビム)といったツールで重ね合わせるなどして整合性を高める「オープンBIM」の考え方を採用している〔図1〕。意匠と構造、設備の統合がポイントとなる静岡営業所の計画でも、オープンBIMがカギとなった。

〔図1〕オープンBIMでコラボレーション
〔図1〕オープンBIMでコラボレーション
竹中工務店が推進するオープンBIMの考え方を実践した。ArchicadやRevitのようなBIMソフトのほか、協力会社が使用する鉄骨専用BIMのTekla、建築設備専用CADのRebroなどをIFCで重ね合わせる(資料:竹中工務店の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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