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BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)との親和性が高いとされてきた積算だが、普及には課題が多い。積算事務所のフジキ建築事務所(東京都豊島区)は、この「最後の聖域」に果敢に挑戦している。

 「積算とBIMは相性が良さそうだと軽い気持ちで始めたが、やればやるほど深みにはまる」。フジキ建築事務所BIMソリューション部の郡山恵子部長は苦笑する。同社では10年以上も前からBIM積算に挑んできたが、満足のいくレベルには達していない。一見すると簡単そうなBIM積算が、なぜそれほど難しいのか。

 同社によると、BIM積算には2つのアプローチがある。1つ目は、BIMモデルの情報を積算システムに読み込ませ、入力の手間を減らす「連携型」〔図1〕。建築数量積算基準に基づいて数量調書などを作成できるので、公共工事に対応可能だ。

〔図1〕BIM積算には直接型と連携型がある
〔図1〕BIM積算には直接型と連携型がある
難度が高いのは直接型だが、連携型にもBIMモデルからデータを劣化させることなく積算システムに入力するノウハウが必要だ(資料:フジキ建築事務所の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 一方、同社が実現を目指しているのが、BIMモデルでじかに積算する「直接型」。積算システムを用いないため、設計者がコストを把握しながら仕様を決めていけるメリットがある。仕上げの情報を細かく入力するので、建築主が改修を検討する際などにもBIMモデルを役立てられる。

 問題は、数量基準に基づかない手法であるため、民間工事でしか使えない点だ。ただし、「最近は、それで構わないというお客さんも増えてきた。いずれは公共工事でも使えるようになると期待している」(同社の谷藤正樹代表取締役)。