所有していても資産価値がなく、税負担増や近隣トラブルのリスクともなりかねない“負動産”といわれる空き家が、この約20年間で倍増。社会問題となっている。危機感を抱く国は空き家活用を促すため、空き家法の改正に乗り出した。住宅市場では新築価格が高騰し、空き家を含む中古のニーズが高まりつつある。今、設計者には何ができるか。プロの手でがらりと空き家の価値を変えた再生事例を見ていこう。

空き家再生に挑む
法改正を追い風に広がる空き家ビジネス
目次
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空き家活用へ国が本腰、転用や建て替え促す
Part1 制度編
空き家対策を推進するため、政府は空き家法の改正案を国会に提出した。「活用促進区域」制度を創設。市町村が区域と活動方針を定め、接道や用途の規制を緩和できるようにする。用途変更や建て替えを促す狙いだ。
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空き家を買い足し改修、点から面へ広げる再生
Part2 事例編(1)
空き家を再生しようにも、数が多すぎる。そんな中、京都の集落に移住した設計者が自ら、複数の空き家を段階的に購入・改修して暮らしている事例がある。1軒だけの“点”から、数軒連なる“面”へと再生を広げる。
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価値を高めて引き継ぐ、「ヤドカリ」の現在地
Part2 事例編(2)
改修で空き家の不動産価値を高め、設計者自身が居住してから次の住み手に受け渡す。そんなスキームの「ヤドカリプロジェクト」が、収益を得て1つのサイクルを終えた。試行を重ね、現在は第3弾まで進行中だ。
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全国から視察殺到の「がもよんモデル」
Part2 事例編(3)
大阪市城東区の蒲生4丁目周辺。ここの「がもよんモデル」と呼ばれる空き家の再生術を学ぼうと、全国から大勢の自治体関係者などが視察に訪れる。同モデルをつくり上げたキーパーソンにノウハウと今後の展開を聞いた。
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住宅の買い取り再販やサブリースが活発化
Part3 ビジネス編(1)
空き家の買い取り再販やサブリース事業が全国で広がっている。買い取り再販最大手への取材を基にその顧客像を探ると、地方で世帯年収201万円~500万円の人々が空き家を含む中古戸建てに高い関心を示していた。
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「AI×空き家」で一歩先、クラッソーネの挑戦
Part3 ビジネス編(2)
人手もコストも課題山積みの空き家問題。活用と共にニーズが拡大する「解体」に、異業種から熱視線が注がれている。「AI(人工知能)」を掛け合わせ、課題解決に挑むスタートアップ企業クラッソーネ(名古屋市)に注目だ。
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自治体も頼りにする、建築士のデザイン力
Part4 展望
空き家活用で建築士との連携が一歩進んでいる自治体がある。建築士に魅力的なデザインと活用提案を求める助成事業を行う神戸市。そして、職員と建築士が助け合う仕組みをつくるため、団体を設立した鳥取県智頭町だ。