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大阪市城東区の蒲生4丁目周辺。ここの「がもよんモデル」と呼ばれる空き家の再生術を学ぼうと、全国から大勢の自治体関係者などが視察に訪れる。同モデルをつくり上げたキーパーソンにノウハウと今後の展開を聞いた。

 「がもよん」の愛称で地元住民に親しまれている蒲生4丁目周辺では、明治時代以降に建てられた木賃長屋や戸建て貸家が、店舗や宿泊施設などに次々と転用されている。2023年3月時点で使われている箇所は35〔図1写真12〕。店の客や付近に住む人が増えて、街ににぎわいが生まれている。空き家の再生を手掛けるのは、蒲生4丁目に拠点を置くRPLAY(アールプレイ)の和田欣也代表だ。

〔図1〕転用プロジェクトは30超
〔図1〕転用プロジェクトは30超
蒲生4丁目交差点の南側に集積している、空き貸家を転用したプロジェクトを地図に落とし込んだ。23年3月時点で35カ所になる(資料:RPLAYの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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〔写真1〕内外装は店主の好きなデザインで改修
〔写真1〕内外装は店主の好きなデザインで改修
築80年以上の空き貸家を飲食店に再生した例。内外装を店主の好きなデザインに改修できることを、空き貸家活用のメリットにしている。2店舗とも、既存住宅と壁を接して立つので、街並みに面白い変化が生まれている(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真2〕庭付きの宿泊施設に展開
〔写真2〕庭付きの宿泊施設に展開
明治時代に建てられた2軒長屋を、デザインの異なる2軒の宿泊施設に再生した例。写真は「宿本陣 幸村」の外観。1軒の延べ面積は120m2で、庭を持つ。古民家のたたずまいを生かして、和を強調したデザインで内外観とも改修している(写真:日経アーキテクチュア)
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 和田代表はかつて阪神大震災を契機に木造住宅耐震診断士の資格を取得し、04年に耐震金物の製造販売を開始。空き家同然の長屋を改修して家賃を大幅アップさせたことがあった。

 蒲生4丁目一帯の貸家を所有しているスギタグループ(大阪市)の杦田勘一郎代表がその噂を聞きつけ、築100年以上の米蔵の活用方法を相談。和田代表は天井を高くする大胆な改修で意外性のあるイタリア料理店に転用して、大成功させた。以来、和田代表はスギタグループが所有する空き家のテナント探し、改修設計・施工、家賃管理、店舗経営のサポートなどを担ってきた。これが後に、「がもよんモデル」と呼ばれることになる。