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人手もコストも課題山積みの空き家問題。活用と共にニーズが拡大する「解体」に、異業種から熱視線が注がれている。「AI(人工知能)」を掛け合わせ、課題解決に挑むスタートアップ企業クラッソーネ(名古屋市)に注目だ。

 クラッソーネは、2011年の創業から一貫して解体工事の見積もりサービスを提供しているスタートアップ企業だ。サービス利用者の累計は約10万人、資金調達額は22年12月時点で約15億円に上るなど、実績を積み重ねている。

 同社が提供するサービスは、蓄積してきた約15万件の解体工事の見積もりデータを用いた「解体費用シミュレーター」だ。ウェブサイト上で、戸建て住宅やマンションなど建物の種類や構造、規模といった物件情報を入力すると、AIが登録工事会社の中から工事内容に合った会社を選択。一括で複数の会社に見積書の作成を依頼してくれる〔写真1〕。

〔写真1〕依頼主と解体事業者が直接つながる
〔写真1〕依頼主と解体事業者が直接つながる
クラッソーネが提供する見積もりサービスの利用画面。依頼主がウェブサイト上で物件情報を入力すると、複数の解体工事会社から見積もりが届く仕組み(写真:クラッソーネ)
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 クラッソーネの川口哲平代表取締役CEO(最高経営責任者)は、「解体費用の相場が分かれば、それが安心感につながり、次の行動の手助けになる」と話す。

 同サービスは21年に国土交通省の「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に採択された。クラッソーネが協定を結んだ自治体に、その地域に合わせてカスタマイズしたシミュレーターの無償提供や、広報活動のサポートなどを実施している。協定を締結した自治体数は、21年12月時点で18、23年2月時点で54となった。