空き家活用で建築士との連携が一歩進んでいる自治体がある。建築士に魅力的なデザインと活用提案を求める助成事業を行う神戸市。そして、職員と建築士が助け合う仕組みをつくるため、団体を設立した鳥取県智頭町だ。
約154万人が暮らす大都市、神戸市。その市内では現在、「建築家との協働による空き家活用促進事業」を利用した空き家の改修工事が、20件進行中だ〔写真1〕。
同事業は市が2022年4月に創設した。建築士が空き家の改修設計を手掛け、空き家の全部または一部を地域が抱える課題解決に活用するという提案に対して、市が施工費や設計費などを補助する制度だ。空き家の所有者または借り主が申請する。
市がこの制度をつくったのは、空き家活用の機運を盛り上げるためだ。市内の空き家率は13.3%(18年調査時点)。空き家の活用を支援する対策はこれまでも様々用意してきたが、空き家は増え続け、さらなる対策が求められていた〔図1〕。
神戸市建築住宅局政策課空家空地活用担当の和淵大課長は、新事業の趣旨をこう話す。「空き家を改修しても、外からその変化が分かりにくいものが多い。建築士であれば、空き家を改修したことが外から分かる魅力的なデザインと新たな活用提案ができるのではないかと考えた。周辺への波及効果にも期待している」
補助額は、外装などの改修費を賄えるように、1提案につき最大500万円とした。
地元の新聞が事業の募集概要を伝えると話題になり、35の提案が集まった。街づくりの専門家や市の職員などから成る審査会が、提案者の名前を伏せて案を選定した。