米サンフランシスコ中心部に立つ超高層マンションで沈下と傾斜が確認されてから7年。複数の訴訟が提起され、現代版「ピサの斜塔」と揶揄(やゆ)された物件で、改修工事が佳境を迎えている。これまでの苦闘を振り返る。
「不気味ですよね」。米サンフランシスコの一等地で働く米セールスフォースの社員はこう心配する。
そのはず、同社本社に隣接する超高層マンション「ミレニアム・タワー」が徐々に傾いているからだ。2023年3月時点で、少なくとも垂直方向に46cm沈下し、沈下のばらつきによってマンション頂部で北西方向に74cm分の傾斜が生じている〔写真1〕。
鉄筋コンクリート造、58階建てで高さ197mの同物件は09年4月に竣工。米ハンデル・アーキテクツが設計し、構造設計は著名建築家との協働も多い米デシモン・コンサルティング・エンジニアが担当した。施工者は大林組の米国子会社、ウェブコーだ。事業費は3億5000万ドル(約480億円)だった。
異常が発覚したのは16年5月。41cmの沈下と15cmの傾斜が確認された〔図1〕。住居の市場価値は「数割は急落した」(米シリコンバレーの不動産仲介会社)という。
16年11月にはサンフランシスコ市が「沈下の事実を知りながら情報開示を怠った」として開発者のミッション・ストリート・デベロップメントを提訴。翌17年までには住人らが開発者などを相手取って損害賠償を求めて提訴するなど、訴訟が相次いだ。
訴状などによると、開発者などは「設計ミスではなく、隣接する再開発の工事が原因」だと主張。大林組は当時、「第三者による検査を経て、適切な施工を発注者との間で確認したうえで引き渡した」と発表した。
訴訟が進んでいた17年7月、サンフランシスコ市は外部の専門家による構造調査結果を公表。「基礎などに損傷は認められるものの、居住の安全性に問題ない」とした。