二酸化炭素(CO2)排出量の削減を狙い、急加速するコンクリートのGX(グリーントランスフォーメーション)。カーボンニュートラル実現に向け、CO2吸収型コンクリートなどが相次ぎ登場、建築物での活用事例も出て来た。製造時の排出量を減らすだけでなく、実質的にゼロ以下にするカーボンマイナスのものまで。政府の規制改革推進会議ワーキンググループも注目する期待の領域だ。「コンクリートGX」で何が変わるのか?普及に向けての課題は?先進企業の取り組みをリポートするとともに、識者に展望を聞く。

コンクリートGX
脱炭素時代の復権へ開発競争が加速
目次
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世界初「カーボンコンクリート造」、独ドレスデン工科大学で誕生
カーボンニュートラルで日本に先行する欧州。ドイツで建築分野の革命が起こった。鉄筋を炭素繊維に置き換えた、「カーボンコンクリート造」建築が世界で初めて実現。脱炭素時代に生まれた新しい建築の実力に迫る。
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材料開発・計画の“総力戦”に、コンクリート「脱炭素」の道筋
製法上、高止まりするコンクリートの二酸化炭素(CO2)排出量。政府目標である「2050年カーボンニュートラル」は、材料開発だけでは達成し得ない。材料効率の高い設計、長期利用を見越した計画などが欠かせなくなる。
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その名は「CO2-SUICOM(スイコム)」、ブランディングに乗り出す鹿島
世界的な需要に向け、コンクリート脱炭素化の技術開発レースは既に始まっている。鹿島は自社開発の“カーボンネガティブコンクリート”を柱として、次世代需要の開拓に向けた知名度の向上を狙う。
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コンクリートに炭素を取り込め、低炭素型の実装が始まった
コンクリートの主要材料であるセメントは、製造過程で原料から二酸化炭素(CO2)を排出する。そこに改めて炭素を戻すのが低炭素コンクリートだ。製造時より多く炭素を取り込めば、脱炭素素材に大転換する。
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シン・コンクリート続々
ジオポリマー実装、混和材の多様化も進展
木材を炭化させた「バイオ炭」を混和して、コンクリート内部に炭素を固定する。清水建設が2022年に公表した技術だ。
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話題の3Dプリンター無筋建築、大林組「3dpod」ついに完成
複雑な造形も自由自在、各種工程を省くことができて材料使用量も減らせる建設3Dプリンター。大林組が自社敷地内に建設していた建物がついに完成した。屋上に人も上れる“無筋構造”の「3dpod」だ。
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コンクリートGX競争、3Dプリンターが主戦場に
3Dプリンターを駆使して、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指すのは大林組だけではない。
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大阪・関西万博がターゲット、アプリで生コンの無駄なくせ
建設現場で生コンクリートが余れば、それだけで二酸化炭素(CO2)排出量は増える。残コン・戻りコン削減を目標に、打設数量の算出効率を高めるアプリ開発が加速している。ターゲットは2025年大阪・関西万博だ。
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「コンクリートの概念は変わる」、脱炭素評価でJASS5再改定へ
加速するコンクリートの技術開発。この分野の第一人者である東京大学大学院の野口貴文教授は、改定したばかりのJASS5(建築工事標準仕様書の鉄筋コンクリート工事)が、早くも再改定となる可能性があると語る。
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自己治癒コンクリートの大空間、福島・浪江に先端開発施設
福島県浪江町に、次世代コンクリートの先端開発施設が誕生する。“コンクリートベンチャー”の會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)が建設中の「浪江RDMセンター」だ。自己治癒コンクリートで大空間を築いた。
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「デジタルとの掛け算がカギだ」、コンクリートを“NFT化”する理由
會澤高圧コンクリートは6月末から、暗号資産に使われるデジタル技術を使った製造証明書の発行を開始する。コンクリートという、なじみ深い材料とはかけ離れるようにも見える、この取り組みの真意を、會澤祥弘社長に聞いた。