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製法上、高止まりするコンクリートの二酸化炭素(CO2)排出量。政府目標である「2050年カーボンニュートラル」は、材料開発だけでは達成し得ない。材料効率の高い設計、長期利用を見越した計画などが欠かせなくなる。

 コンクリート分野のカーボンニュートラルは、どのように達成されるのか。日本の国立環境研究所(国環研)は2022年8月、その道筋を計量的に解明したと発表した。詳細をまとめた論文は、22年7月18日付の英科学誌Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)に掲載された。

 コンクリートの原料生産から建設・利用、廃棄に至るまでの循環モデルを構築し、解析で導いた道筋は、3つの枠組みに大別される。それは(1)従来の供給戦略の見直し、(2)新たな供給戦略の導入、(3)需要側の取り組みだ〔図1〕。

〔図1〕コンクリートGXは壮大な積み上げ算
〔図1〕コンクリートGXは壮大な積み上げ算
横軸を政府目標である2050年までの期間、縦軸を年間CO2排出量とした、コンクリート部門におけるカーボンニュートラルへの道筋。「需要側の取り組み」に当たる部分の赤系統の面積が大きいことが分かる(資料:国立環境研究所)
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 日本のセメント・コンクリート部門における2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、CO2を20年比で年間2000万トン以上削減する必要がある。日本全体の温暖化ガス収支は21年度時点でCO2換算約11億トンの排出超過。カーボンニュートラルとは排出量と吸収量を差し引きゼロとした状態だ。2000万トン以上の削減は社会的に大きな意味を持つ。

 研究は供給者側の取り組みが最大限行われれば、このうち約8割が達成される、と試算した。原料の代替、エネルギー効率の改善や燃料転換、低炭素セメントへの移行といった点を指す。

 コンクリート製造段階の見直しだけでは削減量が2割足りない。論文執筆者の1人、国環研資源循環領域・国際資源持続性研究室の渡卓磨研究員は、この「残る2割こそが重要だ」と説く。それが前出の(3)需要側の取り組みだ。