群馬県富岡市内で発生した斜面崩壊。住宅をなぎ倒し、3人が犠牲になった。土砂災害警戒区域の指定を受けない「緩い傾斜」で発生したため、市は予見が難しかったと説明する。今後は、被災リスクが低いとされる傾斜の緩い斜面でも、土砂災害が増える恐れがある。
群馬県富岡市内匠(たくみ)で斜面崩壊が発生したのは10月12日午後4時半ごろ。集落の東側の斜面が2カ所で崩れた〔写真1〕。土砂は斜面の途中で合流。巻き込まれた住宅1棟が全壊、5棟が半壊し、住民3人が死亡、5人が負傷した。崩壊の幅はどちらも約20mで、深さは最大3mだった。
この斜面の傾斜は20度程度で、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)の指定要件である30度に比べて緩い〔図1〕。
10月15日に現地調査をした国土交通省国土技術政策総合研究所砂防研究室の山越隆雄室長は、「20度程度の緩い傾斜地で土砂崩れが起こる例は珍しい」と指摘する。山越室長は原因について、「崩壊箇所に地下水が集中したため」とみる。
富岡市は10月12日正午過ぎから、土砂災害警戒区域などに避難勧告・指示を出したが、この地区はノーマークだった〔図2〕。市は「警戒区域に含まれておらず、事前に危険性を把握できなかった」と説明する。群馬県の山本一太知事は「周辺で同様の地形を抽出する」と今後の方針を語る。